翡翠の日記帳15ページ目



2003年11月19日





「来たネ。来たネ。来たネ。来たネ。来たネ。来たアルぅぅ!」





「ついにこのシーズンが来たネ!」




「今年も冬コミの季節がやってきあるよ!」





「くくく、今回のワタシはいつものワタシと違うあるよぉ〜」




「そう! 今回ワタシは締めきり一週間前アップを狙うアルよぉ!」




「ところで、翡翠! 今回のワタシらのスペースは一体どこネ!? 今度こそ東館あるよね!?」





「まさかまた西館なんて言わないあるよね? 言ったらコロスあるよ〜」











いや、落ちました。














「……はぁ?」





ですから、落ちました。落選です。





「……意味が分からないネ。何あるか? 落選って」




ですから、コミケスペースがとれなかったんです。




「え? コミケって申し込めば、全員受かるもんじゃないんあるか?」







何脳味噌に蛆が湧いて、美味しく発酵したようなこと言ってるんですか。納豆じゃないんですよ。






毎年3万くらいの申し込みがあって、大体二分の一くらいの確率ですよ。一応……







まぁ、今まで五回連続で受かってましたから、落ちるというのがあったのかという気分ではありますが……






「……すまんある。つまり、簡単に言うとどういう事ね?」






今回の冬コミはお休みです。






「スペースがないということあるか?」






ありあせんね。どこにも。






「出れないあるか?」





出れませんね。欠片も。









「……」








……









「ふざけんなアルぅぅぅぅぅ( `Д´)つ)´Д`)グボォォォー」







「ワタシのこの血と汗と涙とちょっぴりの鼻水に満々ちコップからネチョリと溢れた、このやる気はどうしてくれるネ! あぁ、もう頭の中に来たアルヨ! トサカに来たね! どうにかするアル! いつもみたく必殺の土下座を見せてやるね! 拝み倒してくるね!」








いたた……まったく、アホですねぇ。拝み倒してどうにかなる問題じゃないでしょうに。







何訳の分からないこと言ってるんですか。








もう素直に諦めましょう。







「うかーーやーーーー! いやあるぅ! 諦めるのよくないね! アレあるよ。テレビアニメの主人公は、こういうピンチの時も、どこからかなんかチャンスが舞い込んでくるものある! さぁ、チャンスを出すね!」







「大いなる覚悟があれば、勝利は呼び込めるね! さぁ、命をかけて覚悟するね! 翡翠!」






……そんなのないです。馬鹿な夢見ないでください。








「挫けちゃいけないアル。頑張るね!」






じゃ、私が挫けず諦めずやり続ければ、その間志貴様は何しているんですか?







「家でゲームしてるね」







死ねぇぇぇ!( `Д´)つ)´Д`)ベロボロォー







まったく……毎度毎度、なんでドツキ漫才なんぞせねばならんのですか。







やる気があるんなら、少しは他力本願じゃなくて、自分で根性出してなんとかしてください。







「うあぁ、まったく、なんてことあるかー。私の冬の同人誌売り上げの副収入をどうしてくれるあるかー」







同人誌をお金儲けのためにつかっちゃいけないですよ。








「こんな時だけ、良いこぶって正論ぶっこくなある。ふざけたやつね」




「でもまぁ、冗談抜きでどうするね」






……まぁ、どうにもなりませんねぇ。







「ならんあるか……」







なりません







「……はぁ……仕方ないアルネェ」







でも、志貴様。



落ちてみて、気づいたことがあるんですよ。





「何あるか?」





コミケに落ちたと言うことは、同人誌を作らなくて良いということですよ。





「まぁ、そうね」





無茶苦茶楽ですね。




クリスマス前にひーこらひーこら言いながら、同人誌作らなくて良いんですよ。徹夜もしなくて良いですし。印刷所に謝りにいかなくても良いですし




コミケに行って、売る必要も声を出す必要もないんです。





……天国のように楽ですね。いや、マジな話で。







「かーーーー! 何を堕落したことを言っているか! 根性はないあるか!?」





別に、私そんなお金に困ってる訳じゃないですしねぇ。





なんか、こー、一度楽を味わってしまうと二度とはい上がれないような気すらしてくるから不思議です。




いや、もう年一回でいいじゃんかよ。と言いたいくらいに。






「かー、何を言ってるアルか! 毎回来てくれるお客様に申し訳ないと思わないあるか!? 楽しみにしてくれる人もいるあるよ!?」






まぁ、そういう奇特な人は、おいといて。






「だから、そういう常連さんを敵に回すような発言をするのはやめるねぇぇぇ!」











まぁ、来年の夏まではブラブラしますか……。






「むぅ、まったく仕方ないあるねぇ……。きっと翡翠の応募の仕方に問題があったに違いないね。ホントふざけぶっこいたヤツね!」







というわけで、今年の正月はまったりする予定です。みなさんは冬コミ頑張ってくださいねー。



11月19日






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2003年11月27日




先週の日曜日、日本橋に行きました。




「あぁ、なんか久しぶりに日本橋に来た気がするネ。やっぱり日本橋は良いよー。家に帰ってきたという感じがするね」





「さて、ゲームでも買って、同人誌でも買いあさるアルヨ〜」





そうですね。私も小説買って、購読している月刊雑誌でも買いに行きますか。




ちなみに、私はポイント目的で毎月虎の穴で、まとめ買いしています。



「しかし、微妙に虎の穴得点って、必要なのかいらないのかたまに分からないね。私今まで一回も使った事がないよ。ソフマップ以下とはこれいかに?」




良いじゃないですか。いつか凄く欲しいのが出てきて買うことが出来るようになるかもしれません。


「ホントそんな嬉しい日はくるあるかね」




そんなノリで買い物をすませ、志貴様と別れたときのことです。





私は国籍不明の外人に声をかけられました。




「アメリカから来ました。日本橋に行きたいデス。どこにあるですか?」




ここがそうですが。






「わっつ!? ここが!? おかしいデス。ここにアル建物はみんなアニメの絵ばっかり書いてマス。日本橋と言えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機があるのと違うですか? そんな電気屋さんばかりがあるって聞きました。ここ日本橋違いマス!」








残念ながらここが日本橋ですよ。






まぁ、数年前に比べれば全然様変わりはしたとは思いますけどね。





私が8年くらい前に来たときは、美少女ゲームなんざ捜さないとないくらいでした。(捜せばあるのが日本橋だなぁって所ではありますが)





バリバリ硬派な電気街で、いかにも機械系なパーツ屋さんがいっぱいありました。




「そうです! それが私が求めている日本橋です! それが一体何があったですか!? 私が欲しいのは、電化製品のお店です。こんな、訳の分からない街じゃありません!」




えっと、ですねぇ。どうも東京の秋葉原もそうですが、日本橋もいつのころからか、パソコン専門店が大量に出てくるようになったんですよ。




「パソコン。なるほど電気街に相応しい品デスネ」





しかしですね。どうもパソコンのパーツを日常的に買う連中の趣味の傾向は、どうもみんな美少女に走っていたようなんですね。




「でも、だからって別にここまで大変身はしないでしょう?」




どうも東京の秋葉原がインターネットなどで「聖地巡礼の地」として定着したのが最大の理由のようです。




つまり、コミケに行ったら次は秋葉原。誰が決めたのかは私も知りませんが、私ですら無意識で刷り込まれているくらい、秋葉原がオタクの聖地と化してしまったのです。






そして一旦神格化されてしまうと、あとは習慣で、何の疑いもなく日本中のオタクどもが集まるようになってしまったんですよ。





供給よりも需要の方が圧倒的に多い状態ですからね。そんならうらにゃー損々というので、どんどんそーゆーお店が増えていったんですね。






そしてそういうお客が増えると、今度はそういうお客好きそうなお店が増えてくるわけですよ。ガンダム専門店とか、ガレキの専門店とか、同人誌の専門店とか。





パソコン専門店がなくなってガチャポン専門店が出来る時代ですからね。これはちょっと驚異的ですよねぇ。






で、その秋葉原の変身が、日本橋にも影響を及ぼしているということですね。





「日本の家電製品は世界一デス。それを押しのけるなんて、ワタシには信じられません……」






「それに、なんかこの街は変です! なんか息苦しいです! 分かりました! きっとあのデブどもが吐く息が、私をこんなに苦しめているです! ここは脂肪密度が高すぎるです!」






いや、それは言いがかりだと思いますけど。それはですねぇ。きっとこの辺りのビルに窓がほとんどないからでしょう。




「あ! ホントです! 言われてみればそうです。ありません。どこもかしこも窓を塞いでます。火事でみんな殺すためにしてるのかと思うくらい密閉してます!」




「どういうことですか!? 今時の日本の建物はみんなオープンです! 玄関から置くまで見通せるものではないですか」








この前読んだ論説によると、梅田とかは外向きの性格が集まる所は、全面ガラス張りになったり、アルファベットな看板が増えてオープンな感じになるそうです。





逆に日本橋のような内向きの性格が集まる所は、暗くて微妙に汚い密室で、日本語の看板が増えて閉鎖的になるそうです。







人間の性格が街を作る典型的な例ですね。





「……そういうものなんですか?」





そうですよ。オタク共が、ストリートファッションをして、ストバスをしているのを想像してごらんなさい。同人誌がブティックみたいにガラス張りの綺麗な部屋に並べられているのを想像してみなさい。もうお前ら帰れって気分になるでしょう?




あいつらとはもう住んでいる世界が違うんですから。





「うぅ、そうですか……ということは私が求めていた電気街は、もうこの日本にはないのですね?」




ええ、時代は変わっていくものです。




昔だったら、女の子がへそ出して歩くなんて信じられないみたいに。


昔だったら、オタクが大手振って歩くのが信じられないように。




時代というヤツは、不思議なことに大抵は恥ずかしい方向に変わっていくモノです。





「つまりコギャルはこの先さらに恥知らずになり、オタクはさらに内向的になるってことですか?」




ええそうですねぇ。悲しいことにそうなると私は読んでいます。




解放的すぎるコギャルと、閉鎖的すぎるオタクには、まさに時代が生んだ真反対の存在ですからね。これからどんな変貌遂げていくのか、観察のしがいはありますねぇ。





ちなみに、この電気街オタク化現象は噂では韓国の龍山電気街も、似たようにことが起きているらしいですよ。




暇があったら行ってみても良いんじゃないですか。




「分かりました。色々参考にします。ありがとうございました。日本の人」




そう言って、私はその外人と別れました。




さて、そんなわけで、せっかく日本橋に来たのだから、帰る前に250GのHDを買って帰りました。





ですが、うちのパソコンは、マザーボードのファームウェアーの問題か130Gしか認識しなかったので、仕方なくパーテーションをぶった斬り。





でもその後3.5インチベイが全部埋まっているという事実が発覚し、仕方なく強制的に五インチベイに、ネジ一本で止めるという空中HD接続の荒技に踏み切りました。





HDは今日も微妙に傾いたまま、ガリガリと我が家で生きています。



11月27日






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2003年12月4日





それはある昼下がりのことです。



「あぁ、翡翠さん。ようやく調査を終えました。今回は本当に苦労しましたよ」




……いきなり登場して訳の分からない事を言わないでください。





あんた誰ですか?





「ははは、やだなぁ。何を言っているんですか? この前私の所に調査を依頼しにきたでしょう?」




調査? もしかして興信所の人ですか?




「探偵と言ってください」





探偵だろうが、猫捜しの専門家だろうが、浮気の出歯亀屋だろうが、私の知った事じゃないです。





私はそんなの頼んでないません。とっととお帰り下さい。





「そんなはずはないですよ。あなたに頼まれました。ほらこれ契約書ですよ」





ふむぅ、この字は姉さんのですねぇ……



もしかして、琥珀姉さんと間違えてませんか? 和装に割烹着とか着てませんでした?





「え? あぁ、そう言えば着ていたような……」




やれやれです。まったく、姉さんは何を頼んだんですか? どうせまた後ろ暗い悪の道に染まっているに決まっていますが。







「実は自己調査を頼まれたんです」






なんですそれ?




「あなたは自分の評価って気になりません? 自分が周りの人からどう思われているかって、知りたくないですか?」





いや、あんまり知りたくないですね。




「そうですか? 最近、そういうの知りたがる人が多いんですよねぇ。自分に対して調査をして欲しいって言ってくるんです。先生にどう思われているか本音が知りたいとか、友達から本当はどう思われているか知りたいとか、上司の気持とか部下の気持とか、知りたがるんです」




調べるまでもなく、自分で知っていると思いますが……確かに現代人はそういう他人の評価を気にするきらいはありますね。




「ですよねぇ」




つまり……





琥珀姉さんと間違えて、私を調べてしまったと、そういう訳ですね。





「はぁ、まぁ、そういうことらしいですね。どうします? この調査報告書?」




……まぁ、良いです。




なんかとんでもないものが出てきそうですが、読んでみます。



貸してください。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


翡翠の身辺調査報告書




19××年×月×日に生まれる。母親の話では、五千グラムの巨大児だったらしい。




一人っ子だったため、どちらかというと内向的で、一人遊びをするの好きな子供だったようだ。




小学校に入ると、学校での派閥争いに加わる事になる。というか完璧ないじめっ子だった。




というのも、小学校二年生くらいのときに、友達からイジワルされて嫌な思いをする毎日を過ごしていた。






そこでお母様に相談したところ








「虐めるのは弱いからや。虐められるのも弱いからや。んで虐めを傍観するのもやっぱり、弱いねん。つまり、同じ弱いなら一番被害のないポジションを取るの大切なんよ」






と諭される。




天啓を受けたような気分だった。




強くなれと言わない所あたりが、非常に翡翠の母親臭い。




「なんでも良い、とりあえず逞しく育って欲しい」というところだろうか?




どうもこの母親は、教育の根本原理を間違えているような気がする。




他にも「謝るだけは無料」とか「嘘も方便」とか「旅の恥は掻き捨て」とか




今後の翡翠の一生を付いて回るような名言を、バンバン吐く。翡翠の精神構造の根っこはこの辺りにあるのだと思われる。





虐めていたと言ってもそんなに酷いことはしていない。あくまで自己防衛だと翡翠は言い張る。自分がターゲットにならたないために他に生け贄を捧げていたようである。






一応「怪我はさせない」「相手にお金がかかるような事はしない」というルールは厳守していたようだが、そのぶん精神的にねちっこく虐めていたようではある









中学校の頃は、学校が非常に荒れていて嫌なムードだった。



このころ翡翠、不良連中と某喫茶店の名前の付いた暴走族の子たちと、ふらふら遊びに行くことがあった。




あのクソ五月蠅いマフラーの音を聞くと、脳内アドレナリンが巡るので、お気に入りだったらしい。




しかし、悪い子ぶるよりいい子ぶっていた方が、明らかに得な事をしっていたし、なおかつどうもそーゆー連中とは趣味が合わなかったので、あまり深入りはしなかったようだ。





(連中はいつも連んでいないといけないという暗黙のルールが、孤独癖のあった翡翠には我慢ならなかったらしい)





どうも翡翠は悪い人間だと思われるかもしれないが、そもそも翡翠は、人の1.2倍努力することをモットーとしている真面目な人間なのだ。






何故1.2倍かというと、あんまり無理しなくて良い数値だし、他人より努力してるというのは優越感に浸れるからだ。









そう、翡翠は他人を見下すことが大好きな中坊だったのだ!








しかし周りの人間はあんまり、そういう所に気づかないらしく、何故か陸上部で主将なんかをやっていた。






専門は短距離から長距離全部。砲丸とハードルもやった。ちなみに長距離が一番成績が良かった。






高校生になると、彼の要領良さに次第に磨きが掛かってくる。




成績の学年一位と二位の連中と友達になって、昼休みにお勉強を教えて貰っていた。




頭の良い連中と話をするのは、エキサイティングで好きらしい。



なんというか。「けけけ、下民ども、俺はお前らみたいな愚民とは違うんだよぉ」いう優越感に浸るのが、ほんとーーーに、好きだったらしい。






まぁ、実際はこんなことを思っている奴の方が実際は品性下等なのだが、その辺りは大体自分でも理解していたから、あまり波を立てたことはなかった。




そんな風に性格が捻れまくっており、孤独癖のある翡翠だったが、幸いなことに彼女は根っからの大阪人でギャグキャラだった。








……馬鹿なことをするのが好きだった。








大好きだった!






誰も見てなくても変なことをやった。(エレベーターで寝たり、山で遭難してみたり、パンツ一丁で自転車抱えて川を渡ったり)そういう変なことをする自分に対して、一人ツッコミを入れるが、生き甲斐だったらしい。







まぁ、性格の捻れよりも変人ブリの方が勝っており、なおかつ喋るのは上手いほうだったので、友達とは上手くやっていた。もめ事を起こしたことはない。あまり。






高校ではバスケ部に入っていて、ポジションはシューティングフォワードだった。





ちなみに、ここでもキャプテンの座を狙って、毎日欠かすことなく朝六時から朝練を初めて、夕方も最後まで残ってひたすら練習していた。




どうも複数のことを同時進行するのは苦手だが、一つのことにひたすら集中するのが得意な人間らしい。




しかし、キャプテン争いに負けたり、レギュラー落ちしたりと、ほろ苦い高校部活生活だったりする。




このころから異性関係の話もちらほら出てくる。



どうも翡翠は恋愛運が悪いらしく、付き合った子はよく調べてみると、二股かけられてたとか、実は本命が他にいたとか、結構酷い目にあっている。




というか、「実は恋人持ちでした」ってパターンばっかり……。なめんなよ。最初にいっとけよ! とか言って友達に泣き言漏らしていたりする。




その為多少女性不信に陥っているきらいがある。




大学に入ると、オープンな雰囲気に感化して、一気にオタク化してしまう。




さらにエロゲーにはまり、同人誌を書き、泥沼と化す。




ただどうもオタク野郎の事はあまり良く思っていない。





自分のことを棚に揚げて、オタクは社会のクズだと信じている





自分には甘く、他人に厳しい性格らしい。最悪だ。






大学時代は勉強のできる友達に、教えて貰っていたら簡単に単位が取れたので、翡翠はひたすら遊んでいる。






それでも二年間で三年分の単位を取ったので、真面目なんだか不真面目なんだかさっぱり分からない。






原付も買ってブイブイ言わせていたが、三年間で十一回も捕まってしまうようなドボンキングだった。





未成年のうちは何やっても捕まらないだろうからということで、ほんとーに馬鹿な事ばっかりしている。







ポリシーは小学校の頃から同じで、肉体的金銭的被害を与えないというものだ。





もっとも、実被害与えた人もいたりするが、未成年のしたことですから許してください。と今は平謝りするしかない。





二十歳になったころから、馬鹿なこともできないので、空いた時間を見繕って小説を書くようになる。





そもそも物語を紡ぐのが好きだったし、雑文を書くのも好きだったことが影響したらしい。




何の因果か、それ以後本気で勉強し始めて今にいたる。





趣味は読書に映画鑑賞に海外ドラマなど、エンターテイメント全般の観賞。月十五くらいの漫画雑誌に目を通しているマンガ好き。でも、それ以上にジャンルを問わず小説が好き。部屋の中は小説まみれ。




ただゲームは非常に苦手。面白いので、やると現実世界に戻ってこれないので、なるべくしないようにしているらしい(現在分割して出来るように矯正中)。




最近は週二回の水泳も、趣味入れても良いかも知れないと思っている。(ついに二キロ泳げるようになったのだ。ついこの間までカナヅチだったなど誰が信じようか?)



ブルース・ウィルスとニコール・キッドマンを愛してやまない。



他にも――




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「あれ? もう見ないんですか?」





なんですか? これ?




「ですから、翡翠さんの調査記録です」




嘘八百です。私はこんなにひねくれた人間じゃありません。もっと誠実で清らかな人間です。





「……いるんですよねぇ。自分調査を頼むと、調査の仕方がおかしいって文句つけてくる人」




私はみんなの人気者で、翡翠さん翡翠さんってチヤホヤされるような人間なんですよ!




模範的な生徒だったんですから。






「はははは、馬鹿ですねぇ。翡翠さんが、馬鹿なことを一つもしていない優等生だったんなんて、誰が信じるんですか? 一人も信じたりはしませんよ」




なんか、滅茶苦茶馬鹿にされてるよーな気がします……




まぁ、何にしてもこんな評価は、全くあてにならないということですね……。





と言うわけでみなさん。信じちゃダメですよ。こんなの嘘八百ですから。





「じゃどんなのが本当なんですか?」






えっとですね……





「なに!? 隣の子が虐めらている!? 私が話をつけてきます! おお! 子供を虐めるやつは私がゆるしません」





「暴走族が出た!? 私が注意してきます!」





「勉強の効率の良いやり方? 何言ってるんですか? 他人を頼らず、勉強は毎日コツコツやるんです! それで初めて力になるんですから」




「オタクバンザーイ」







といまぁ、こんな感じなのが、本当の私です








まぁ、一言で言うなら正義の味方で、誰もに好かれるスーパーマンみたいなもんですかねぇ。私は本当は凄いんですよ。






自己正当化なんて、姑息な事はしたこともありませんよ。ええ、ホントに。





他人に気を使いすぎて、いっつも貧乏くじ引いてるんですから。






「だから誰も信じませんって……」




12月4日






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2003年12月10日




さて、今回は少しばかり、しんみりしたお話を書こうと思います。





まぁ、気分というヤツです。私の気分は常にマントルの直中にあるので、流動的にどんな話だって書いてしまうのです。





それは私の母の母親と父親。つまり私の祖父母に当たる人のお話です。





私の祖母は大阪の吹田の出身で、祖父は石川県の金沢出身だったそうです。祖父の家は山をいくつも持っている大地主。いわゆる庄屋の家だったそうです。




家は六段[ろくたん]もあるお屋敷だったそうです。段は昔の単位で、一段が私の家の前にあるスイミングスクールの大きさだということですので、かなりの大きな屋敷です。豪華な平屋で、倉が三つあり、何人もの奉公人を雇っていたそうです。




農地改革が入るまでは、広大な田んぼと小作人を何十人と雇っていました。




ぶっちゃけ。旧家の凄い金持ちなのです。目玉が飛び出るくらいです。




ところが戦争が始まる前(昭和11年くらい)、祖父は病気で倒れ、実家の石川県の方で療養しました。




祖母は看病のために、列車に乗って大阪から石川県まで通っていました。




当時の列車は、一等、二等、三等と値段に応じて乗る車輛が違ったようです。一等はガラガラ。二等も完全には埋まっていません。ただ三等にはすし詰め状態で、通勤ラッシュのように人で埋もれていたそうです。時代を感じさせます。




さて、その時祖母は三等の切符を持って、息子二人と娘一人(これが私の母親です)を連れて列車に乗ります。





しかし、三等は混んでいました。







鬱陶しいほど混んでいたのです。








そこでなんだかもう面倒になったらしく、祖母は子供三人を連れて車輛を移動すると、堂々と一等の席に座ったのです。なにせガラガラです。座りたくなる気持も分かる気はします。






今の感覚で言うと、飛行機のエコノミーのチケットしか持っていないのに、ファーストクラスの席に堂々と座っているようなものです。





私でも、こんな真似はできません。





すると、当然のように車掌さんが「切符拝見〜」と言って回ってきます。




もちろん見つかったら、三等の席に追い返されます。




『はい、乗車券を見せてください』





祖母は即座に言いました。






「落としました」





『は?』





「ですから、切符を落としたんです」








『え、どこでですか?』








「何アホな事を言ってるんですか。落とした所が分かったら拾いますよ。分からないから落としたんですよ。なに心配しないでください。ちゃんと駅についたら、お金を払いますから」






『……』




大丈夫ですよ。私のような明治生まれの人間は情に厚いですし、金銭のことはちゃんとするんです。駅に着いたら払いますよ





と、まぁ、そんなバトルがあっり、祖母は最後まで一等の席に座っていたそうです。





そして運命の駅が近づいてきました。





もちろん、そこに到着してしまったら、お金を払わなくてはなりません。




そこで、祖母は――






速度が落ちてきたのを見計らって、列車から飛び降りたそうです。








そしてそのまま、子供三人を連れて全力ダッシュで逃げたとか。









今の感覚で言うならば、飛行機に乗っているとき、空港に着く前にパラシュートを付けて脱出したよーなものです007ばりの大アクションです。






祖母曰く、









「三等の乗車券は買っています。鉄道会社に物理的な損はさせていません。鉄道会社は私が三等の席に座っていて、最後までちゃんと乗ったと思い込んでおけばいいんです」








とか言ったとか言わなかったとか。








その話を聞いた時、あぁ、私はこの人の孫なんだなぁ、と思ったりました。






さて、祖母がそんな無茶をしたせいかどうかはさっぱり分かりませんが、間もなく病状が悪化して、祖父は死んでしまいます。






大阪に帰ってきた祖母ですが、それまでは石川の家から、何やかしらの援助があり、それなりに暮らしていたらしいのです。ところが、祖父が死んでからというもの、援助はあっさりとうち切られたそうです。実に金持ちがしそうなことです。





それから戦争が始まって、祖母は大変だったようです。何しろ子供を三人も抱えていたのですから当然です。





死ぬほど苦労したのだろうということが、想像できます。





それから戦争が終わり、世の中が安定してきた昭和二五年。祖父の父親(私の曾祖父)が死んだとかで、祖父の弟が祖母を迎えに来たそうです。






ですが、祖母は








「はっ、今まで放っておいて今更迎えに来るも何もなりません。お金があれば人間が動くと思ったら大きな間違いです。とっとと田舎に帰って、お山の大将気取っておきなさい」










と、啖呵を切って、そのまま縁をぶったぎってしまったそうです。




お金があっても、そんな情の薄い所には関わり合いにならない方が良いのです。人には人の身の丈の生き方があります。分不相応なお金や身分は必要ないのです。




なんというか、玉の輿も良いことばっかりじゃーないなぁーと身につまされます。




その祖母も二年ほど前にお亡くなりになってしまいました。なんというか、こういう話を聞くと、祖母が死ぬ前にもっと色々話を聞いておけば良かったと思います。




必要な時に必要な人はいない。世の中がいつもそんなものだとはいえ、困ったことです。本当に――




ところでつい最近、その石川県の実家の倉から祖父の「刀」が出てきたそうです。そう日本刀です。俗に言うところの、爺様の形見の刀とかゆーものです。








少年漫画のような展開です。
(古い刀などは倉から出てきたと言って役所に提出すれば、簡単に登録できるそうです)







正直欲しいです。かなり欲しいです。現在叔父さんと所有権を巡って争っていたりします。








それにしても、お金より刃物の方が良いって、どこか歪んでないかな? とか思ったりします。







どうでもいいけれど、こんなしんみりした日記を書いたのは、翡翠の日記帳始まって以来だなぁ。







まぁ、たまにはこーゆーのも良いんじゃないかなぁーということで。


12月10日






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2003年12月19日




彼女はクリスマスの夜にやってくる女である。



赤い服を着て、白い大きな袋を持って、ソリをトナカイに引かせてやってくる。



彼女には一切の情けも容赦もなく、それどころか血も涙もない。



ゆえに彼女は、畏怖を込めてこう呼ばれる。







のサンタクロースと――










ども、翡翠です。



最近、鋼のサンタクロースのアルバイトを始めました。



一足早いですが、プレゼントをみんなに配りましょう。



まずはネロ教授の所に行きましょうか〜。




コンコン。






こんにちわ、教授ー。






「む、翡翠か。なんだね?」





今日の私は鋼のサンタさんなのです。プレゼントを持ってきましたー。何が欲しいですか?





「何でも良いのか?」




無論です。





「では、おねがいツイ○ズの全キャラフィギアを出して貰おうか」





お安い御用です。(ごそごそ) はい。これですね。





「おお! 凄いな。何でも出せるのか? そのサンタ袋は!」






まぁ、ある程度限界はありますが、出せますよー。





「では、貰っておくとしよう」





では私も教授の冬コミのサークルチケット三枚組を貰っていくことにしましょう。





「ちょっと待て! 何を言っておる!」




何って、プレゼント上げたんですから、私も貰わないと不公平ですよ。





「いや、サンタなのだろう?」






サンタがプレゼント貰っちゃいけないという法がどこにあるんですか?






プレゼントを上げたら、プレゼントを返すのは当たり前でしょう。





クリスマスにプレゼント交換は必須です。






良いですか。この資本主義世界において、ただなんてことないんです。








全て等価交換ですよ。








無から有は生まれたりはしません。






これは、のサンタクロースの基本中の基本です。






「いや、しかし世の中のサンタクロースは、みんな無償でやってると思うが……」





何脳味噌に蛆が湧いた小学生みたいな戯れ言を言ってるんですか。





あれは両親とかが、お金を出してるんです。




そのお金と等価交換で、サンタクロースは子供にプレゼントを渡しているんですよ。





「それを言ってしまったら、身も蓋もないではないか。子供の夢とか色々あるだろ」





世の中にあるのは子供の夢ではなく、経済効果を見込む、金に醜い大人たちがいるだけです。





ビジネスの世界に夢だの愛だの甘チョロい感情が、口を挟める隙は有りません。






「血も涙もないな……お前……」






鋼のサンタクロースですから。そんなつまらんもん有るわけありません。








さて、それでは私はそろそろ次の所に行こうと思います。では、メリークリスマスネロ教授。







「むぅ、二度とくるなー」






さて、次は志貴様の所にでも行きましょうか。





はーい、志貴様。プレゼントです。何が欲しいですか?





「そーねぇ。ちびっこくて、はしっこくって、控えめで、ドジで、泣き虫で、ワタシが家に帰るとたーってはしてきて、ピトっとほっぺたくっつけて、『えへへ、お兄ちゃんちゅきー』とか言ってくれる、妹が欲しいね」







またマニアックな要求ですね……




条件分かってます?




「分かってるね。等価交換あるよね? ワタシ妹のためなら、何も惜しくないね! 心臓でも両腕でも、好きなだけ持っていくある!」





はぁ、分かりました。それでは等価交換維持費として、毎月百万ほど出して貰いましょうか。




「……なにか維持費って?」





あのですねぇ。物体と違って、人間というのは保存が利かないんですよ。





例えば、恋人たちの交換では、時々、男の方が高価なプレゼントを渡していたりしますが、あの辺りは、女の子の好意と等価交換ですから、まぁ、精神的にOKな訳ですよ。





ただ、当然のことながら、物体は保存が利きますが、精神は保存が利かないので、時間が経過すると、等価値にならなかったりします。





それを維持するためには、やっぱりその都度、維持費を払って貰う必要があるわけですね。





とりあえず業者の人に言って、雇いますから、なーに安心してください。ちゃんとお望み通りの女の子が来ますよー。






「ちなみに、お金がなくなったらどうなるあるか?」






金の切れ目が縁の切れ目です。






「……なんか、それ微妙に違う感じがするあるが」






ははは、ダメですよー。女の子の本音(通称真理と呼ぶ)なんか見たら、身も心もボロボロにされて、もうこっち側に戻ってくれなくなりますかすから。







では私はこれで〜。







えっと最後に秋葉様ですね。







秋葉様ー。プレゼントは……









「体中の贅肉を、胸に持ってきなさい!」







え、あ、なんかいきなりですね。







「等価交換なのでしょう!? 等価交換というのは、同じ物質ならOKでしょう! だったら、脂肪を脂肪に変える! こんな完璧な等価交換がどこにあるというの!? さぁ、しなさい。脂肪を脂肪に! 脂肪を脂肪に! 脂肪を脂肪に!






そんなに興奮しないでください。





残念ですが、生体錬成……でなくて、変換は法律で禁じられているんですよ。






「何それ!? どういうことなの!? 法律なんてクソ食らえよ! あんた鋼のサンタクロースでしょう! どうにかしなさい!」






いや、そんなこと言われても。





「いいからなさい!」





……はぁ、そういえば、この世界のどこかに贅肉を胸に変換できる、美容整形のエキスパートがいるという話は聞いたことがあります。





「カリスマ医師とか言うヤツ?」





いえ、それよりもっと凄いです。『賢者の医師』と呼ばれるくらい、凄い人です。





その人なら……あるいは……





「分かったわ! 賢者の医師を捜せば良いのね!」






って、待って下さい。秋葉様!





(どたどたどた)





……あぁ、行っちゃいました。賢者の医師だと等価交換にならないで、代金を高くとられたり、リバウンドで余計に太ったり、シリコン埋め込まれる危険性があるって言うのに……





外道の法に頼るとろくな事がないですけどねぇ。





まったく世の中って嫌ですよねぇ。等価交換という絶対的に平等な方法があるというのに、どうしてみんな自分だけが得しようとするんでしょうか。




そういえば、もうすぐ冬コミが始まりますが、同人誌って、明らかに等価交換じゃないよなぁーとか思ったり、思わなかったり。





さて、では、それでは世の中の子供たちのために、プレゼントを配って歩くとしましょう。






え? 交換するもののない子はどうするのかって?







心配無用です。臓器ブローカーにコネ持ってますから。






やれやれ。鋼のサンタクロースも楽ではありませんよ。



12月19日






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2003年12月27日




今年も残すところあと僅か。





私も大掃除を始めなければなりません。




普段から、そんなに掃除機などもかける方ではありませんので、この機会にやっておこうかと思います。




ちなみに、私は自分の部屋を二つ持っていますので、掃除力も倍必要という、金持ちは税金を多く納めなければならない的、いやぁんな展開です。





「翡翠ちゃーん。お掃除終わったんですか?」




そういう姉さんは洗濯ですか?




「はい。良いお天気ですから」




どうでもいいですけど、なんで男のモノの下着なんか、干しているんですか?




「防犯に決まってるじゃないですかー。家に住んでいるのが、女の子だけだと思われたら、危ないですよー。最近は色々物騒ですからね」






だからって、自分の部屋のベランダに干すことないと思いますが。






「みんなやってますよー。ネロ教授だって、自分の部屋に女のモノの下着を干していますし」






いや、それは色々違うような気はしますが……




「そうですか?」




教授らしーっちゃー教授らしいですがね……。







「部屋を見れば、その人の人間性が分かるって良く言いますからねー」






確かにそうですね。持っている本の種類や、道具の種類なんかで、大体どんな生活をしているのかは見当付きます。






「ええ、翡翠ちゃんの部屋なんて、片方の部屋は大量の本で埋まっていて、何がなにやらさっぱりわかりませんし、もう片方の部屋はコンピューターと服で埋まっていてなにがなにやら、やっぱりわかりませんし」





「掃除したときに、有効期限が切れたプールの回数券五四〇〇円分がスタンドの下から出てきたり、本の間から断髪式の時に切った髪が出てきたり、どういう訳かテレビの後ろから、10万円もの大金が発見されたりしましたし」







「翡翠ちゃんの性格丸わかりですね」








人をズボラ大賞受賞者みたいに言わないでください。





姉さんよりマシです。




「えー、そんなことないですよ。私の部屋は翡翠ちゃんの所よりマシでしょう。パソコンラックの下から使用済みの下着が出てきたりしませんし」







私の部屋だって、姉さん所みたいに、引き出しを中にから、うんこの置物が出てきたりしません。









「でも、うんこの置物はトイレに置くのも変な感じですし。引き出しの中くらいしか置くところがないじゃないですか! 誰だってうんこの置物を手に入れたら、そうするはずです!」






いや、そういう問題ではないのですが……





そう言えば、他にもトイレを見たら、その住人の性格分かるって言います。



姉さんもその典型で、
トイレにお茶の入った水筒とか置いてるでしょう。






ああいうところに、あんなの置き忘れないでください。





姉さんだって、結構ズボラじゃないですか。





「あれは置き忘れてるんじゃなくて、置いているんです」





はぁ? トイレでお茶飲むんですか?



「違いますよ。なんでそんな大便しながら、カレー食べるみたいな真似しないといけないんですか」






じゃ、どうするんですか?





「だから、こんな感じに使うんですよー」




もやもやもやぁ〜〜〜〜ん





◆ ◇ ◆ ◇使用回想◆ ◇ ◆ ◇




ピーンポーン



「はい、どちらさまですか?」




「私、ジュエリー磯崎の販売員をしているものです」




「訪問販売なら間に合ってますよー」




「おっと、待って下さい(ガッと、扉の前に脚を入れる)」




「少しで良いから、お話を聞いてくださいよぉ。なぁに。ほんの二、三分」





「いいえ、結構ですから……」




「まぁまぁ、そう言わずに入らせ貰いますよ(無理矢理入ってくる)」





「仕方ないですねぇ……。ではお話だけはお伺いします」




「話が分かる人で助かった。この炎天下ですからね。暑くて暑くて」





「では、何か飲み物を持ってくるので、ちょっと待っててください」







言って、琥珀はトイレの中に入る。








じょろろろろろろろろろ……
(水筒からコップにお茶を注ぐ音)









「……」











じゃぁーーーーー!
(トイレの水を流す音)






「はーい、お待たせしましたー」





◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「なーんて感じに使うんです。魔法瓶だからほかほかですよー」






まぁ、確かに性格出てますね……色々と……。





「ポイントは水の音を聞かせることですね♪」



いや、そんな楽しそうに言われても……



12月27日






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2004年1月8日




どうも、翡翠です。あけましておめでとうございます。



少し間が空いてしまいましたが、まぁ気にしないでください。なんかダラダラしているうちに、書くの忘れてただけですから。




さて、今回は東京都在住の乾くんが、久しぶりに大阪に戻ってきたので、一緒に初詣に行ったときのお話です。




JR鶴橋駅の前で、乾くんは開幕一番言いました。





「翡翠……。最悪だ……どーにかしてくれ……」





あのですねぇ……




なんでいきなり、そんな台詞なんですか? 普通あけましておめでとうでしょう。せっかく帰郷したんですから、そういう挨拶はきっちりしてもらいたいものです。




「帰郷っていうか、逃げてきたからな……そういう気分じゃないんだよ」




逃げてきた?






「おう、聞いてくれ……この正月は俺の人生の中でも、もっともとんでもない事が起こった時だった……」





ウザイですねぇ……
一人で悲劇の主人公ぶらないでください。




私の方がよほど散々でしたよ。こんな滅茶苦茶な正月を送るのは、多分初めてですよ。





「……お前はお前でなんかあったのか?」




ええ、聞いてくれますか?




「その後、俺の話聞けよ?」






分かりました。では、まず私から話しましょう。










事の起こりは、去年の十二月三十日でした。







私はいつものように朝風呂から上がると、ソファーでトーストと林檎を食べつつ、コーヒーを飲んで優雅に過ごしていました。





すると急にしくしくとお腹が痛み出し、激しい下痢に襲われたのです。





私は即座に正露丸を飲み、様子を見ましたが、まるで効果はありませんでした。






一日三回九錠も飲んで下痢が止まないところを見ると、





どうやらこれは
食中毒のようです。







一体何が原因で食中毒になっているのかは分からぬままですが、そんなことはお構いなしに腹は痛み続け、夜には発熱し、頭痛まで出てくる始末です。






当然病院は正月休みです。






また、このころ家の人間たちは、みんな揃って実家に帰っていて誰も居ません。








私一人です。








料理を作る気力も、食いに行く体力もありませんから、飯も食えません。



仕方ないので、お腹を暖めるためにコーヒーとかホットミルクを飲み、そこらにあったカロリーメイトチーズを食らいます。





ろくな飯が食えぬまま、一日二回バファリンを飲んで、頭痛止めと熱を下げつつ、寝ながら正月を迎えたのです。








するとです。




正月を開けた頃には、熱は下がってきたのですが、腹痛がさらに酷くなってきました。





それに不思議なことに便が黒くタール状になってます。





ここのところ、ろくに飯を食っていないので、宿便でも出てきたか? と考えました。




ですが、あんまりお腹が痛いものだから、一度ネットで症状からどんな病気なのか調べてみたんです。






――検索結果――




コーヒーは胃腸の粘膜を刺激するので、下痢時には飲んではいけません。




あと、牛乳チーズなどの脂肪の多いものも御法度ですお菓子類なんてもっての他




なるべくおかゆやうどんなどの消化に良いものを食べましょう。




バファリンのような鎮痛剤は、副作用として胃腸の粘膜を荒らし、胃潰瘍胃炎十二指腸炎の原因になりますので、注意が必要です。




あ、そうそう





黒色便になるのは胃か十二指腸から大量に出血した証拠です。医師の診断を受けることを勧めます。





――検索終わり――






ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ! なんじゃそりゃーーー!






と、私が叫んだのは言うまでもありません。







「胃に穴が開いてたのか?」





どうやら、そのようです。





空腹時に一番痛くなりますからね。どうやら食中毒胃潰瘍コンボのようです。




あなたに分かりますか?




この正月は病院にも行けずずーっと腹をかかえて、インスタントのうどんばっかり食ってたんですよ。





本当にたまりませんね。






「はぁ……やっぱり、翡翠の不幸なんてその程度なんだよ。所詮胃に穴が開いただけじゃねぇか。そんなの俺の身に起こった事に比べれば、全然への河童じゃんか」







じゃ、乾さんは、どんな不幸があったんですか?








「俺に恋人がいるのは知ってるよな?」






ええ、○○歳(自主規制)の年増でしょう?






「お前人の恋人捕まえてすげぇ失礼なこと言うな……」



で、その人がどうかしたんですか? フラれたんですか?



「今年の八月にプロポーズされる予定なんだよ」



……なんです? プロポーズされる予定って?






「八月にプロポーズされてそのまま婚約、九月に結納。そして十月に結婚という完全コンボが予定で決まってるんだ。まるで運命の如く」






え……、いや、プロポーズとか予定とかで決まってるものなんですか?






「決まってるものなんだよ。なつーか、非常に几帳面なヤツでな。そういう事を先に決めるらしい。もちろん俺に一切相談なしで。プロポーズの時期まで決められたのは、日本広しといえども俺くらいじゃないか?」







「俺ニコニコしながら婚約指輪買うお金貯めて置いてねとか言われたぞ。もうなんつーか」





「まったく逃げ場なし」




まぁ、○○才(自主規制)ですからねぇ。焦ってるんでしょうね。きっと。





観念して結婚しちゃえば良いんじゃないですか?






「うぉー、この年で家庭に入るのか。俺はぁ!? どうにかならんのか!?」






日本の統計では、早く結婚して後悔するのと、遅く結婚して後悔するのとでは、前者の方が圧倒的に多いですが、まぁ、大したことじゃありません。気にしないでバシバシ結婚しちゃましょう。ははは。







「何故に笑う!?」






いや、他人の不幸って面白いですから。ははは。






とまぁ、そんな話をしながら、二人で初詣に行きましたとさ。






ちなみに、おみくじを引いたのですが……。








私は「大吉」で、乾くんは「吉凶相交」でした……。







「なんだよ、吉凶相交ってっ!?」






と叫んでいた乾くんの声が、今も耳に残っています。




1月8日






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2004年1月16日





それはこの前の日曜日、ネロ教授と図書館に行ったときのことです。



私の習性なのですが、図書館に行くと必ず何か一冊雑誌を持って、席に着きます。主に席確保のためであり、あと疲れたときにチラリと読むためです。



持っていく雑誌はその時々で、政治関係であったり、化学関係だったり、医療関係だったり、水泳の本であったり、文章作法の本だったりします。




その日取ったのは、赤ちゃん関係の本でした。「赤すく」だったと思いますが。




と言いますのは、私は凄く子供が好きです特に赤ん坊が大好きなのです。




あのちっちゃくて愛らしい顔を見ていると、ついつい構いたくなってきます。




「高い高い〜」とか「早い早い〜」とか言いながら、ジャイアントスイングしたくなるくらい好きなのです。




普段は図書館の裏にある公園にいる、人妻様とがきんちょ共にちょっかいかけつつ、昼飯を食っていたりするのですが、最近とても寒いので、公園でメシを食う気になれません。




そんなわけで、がきんちょレベルを、補充するためにこーゆー本を読んでいたりするのです。




「ほう、翡翠にも意外な一面があるものだな」




そうですよ。私は実は子供にはとても優しいんですよ。



ネロ教授。あんた私ががきんちょを見つけたら、とりあえず蹴り飛ばして、どけぇ、ガキ共じゃまじゃぁーボケェ、とか言うと思っていたでしょう。





「翡翠だからなぁ」






心外ですねぇ。




おや?





ところで、ネロ教授は何を読んでいるんですか?





「うん? 翡翠と似たようなものだ」





「幼女本というやつだな」





「最近は幼女もファッショナブルでな。ちっこいのに可愛い服を着ているのだ。しかもこー、私のロリ魂を揺さぶる凄いデザインでな。もう存在そのものがコスプレみたいなものだな





「こういう風な雑誌を見ていると、日々のギスギスした人間関係から解放され、心が和む」






いや、「(;´Д`)ハァハァ」言いながら幼女の写真を見ているのと、私の子供好きを一緒にして欲しくないものですが……。





私のは、純粋に子供が好きなんです。




「私だって純粋だぞ。世界で一番幼女を愛している」





「私が邪だというなら、翡翠が赤ちゃんを見てはぁはぁ言ってるのも邪ではないか!」





私のは、ほら、赤ちゃんなら男の子も女の子も好きですし。






「では、私も幼男に(;´Д`)ハァハァ、すればよいのか?







いや、それはそれで幼女以上に問題ありです……





「だろう?」





えーっと、そうじゃなくて、やさしく抱きしめてあげたいんです。私は子供がいませんから母乳はでませんけど、いつかあげてみたいくらいです。





そうです。母性本能というか、そういうのです。







「うむ、私も幼女をやさしく抱きしめて、是非ともおっぱい吸わせてみたいぞ」







「はぅ、この子、乳首しゃぶってるぅ! 凄〜い、ダイタ〜ンンン」





「てな具合に」






「まぁ、これも一種の母性本能か?」









母性本能を愚弄すんなぁぁぁ( `Д´)つ)´Д`)ぐぼぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







「うぅ……(ぱたり)」





まったく、訳の分からないことを言い出したら、きりがないんですから、この人は。




それにしても、砂場で遊んでいる子供を見ていると、お母さんの目が凄く優しくなります。





もちろんロリの上、親子という究極の禁断ぶりが燃えるわけではなく、親子の愛情というやつですね。





そう言えば、子供が好きな人に悪い人はいないと言います。






アニメとかでも、どんな悪役でも、子供と戯れているシーンが入ったら、実は結構良いヤツって言う風になりますしね。









……ん?







あれ? じゃ、もしかして私って実は良いヤツだったのか?














……(思案中)……










き、気づかなかった……






なにしろ昔から、友達に「私って本当はいい人なんです」と言っても、みんなして「お前がいい人であるというのは、それが完全に間違っている点をのぞけば、おおよそ正しいよ」とか罵倒されていたので、てっきり私はあんまりいい人ではないと思っていました。




そうか……。私って、実は良いヤツだったんですね。








「つまり、幼稚園服萌っす〜とか言ってるロリコン野郎は、みんな良いヤツだってことで……」







だから、オマエラといっしょにすんなぁー
( `Д´)つ)´Д`)バキボォ








とまぁ、新たな自分を発見をしつつ……




1月16日






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2004年1月26日





「何をしているの祐巳。お尻を私の方に向けなさい」




え? でも……お姉さま……




「いいから、はやくなさい。私の言うことが聞けないの?」




(ぐすん)わ、わかりました……。あの……これで良いですか?




「こんなに汚してしまって、ホントしょうがない子ね」




あ、駄目です……。今出したばかりだから、き、汚い……いやぁ……




「動いちゃだめよ。祐巳」





だって、音が……ぴちゃぴちゃ言ってるから……





「どう? 暖かくて気持が良いでしょう?」




……(真っ赤)




「どうして欲しいの? 口に出さないと出来ないわ」



もっと……



「もっと、何?」




(ボソ)強くしてください…





「ふふ、祐巳ったら」







あ、だめ! お尻に、お尻がぁ……あぁぁぁぁんっ!




「はい、これでお終い」





はぁはぁはぁ……





「いい? 今度から用を足した後は、トイレットペーパーなんて使っちゃだめよ。今度から、全部私が綺麗にしてあげるから」




でも、そんな……




「(ちょっと強く)良いわね?」




は、はい……

























もうトイレットペーパーはいらない。トイレ用品の大革命ウォシュレット祥子様2014。初心者でも音声で使い方を教えてくれる親切設計。USB端末からデーターを入力することで、好きな音声入力可能。12000円(送料込み)












……




いや、なんつーか。色々言いたいことがありますが。




志貴様……のっけから意味不明のCM流さないでください。読んでいる人は、一体何が起きたのか、さっぱり分かりませんよ。きっと。






「えー、こんな斬新なCM他にないあるよ」





もしかして、コレ志貴様が作ったんですか?



「そうアルよ。これからは兼業の時代あるから、ワタシもたまにはこういうのをプロデュースしたくなるアル。CM新時代の訪れね」




新時代だか、新幹線だか知りませんが、下品すぎです。トイレの便座に座って、喘ぐ女の子ってかなりキモイですよ。




「キモイとか言うな!」





キモイもんはキモイです。まったくあの子もよくこんなCM取らせましたね。




「あれは、この前梅田で拾った女の子ね。名前は沢祐巳というアル」



「もとお嬢さまだったあるけれど、悪い友達に誘われて、薬をに手を出したのがケチの付け始め、ヤバイ男に目を付けられて、転げ落ちるようにそっちの道に入り、今ではエンコーで生計を立ててる、最下層民級駄目女ね」




一字違いでえらい違いですね。




「まぁ、毒の一字はそれほどに重いものあるよ」







それはいいとして、なんでこんなノリなんですか?





「よく考えてみるね。最近は意味不明のCMが非常に多いアル。松井だとかイチローが何の脈略もなく野球していて、最後にロゴが出てくるヤツとかあるよー」






「あんなもんで、CMを名乗ってるね。許せないある」





「アレに比べたら、こーゆー洒落っけのある方がよほど面白いCMしてるあるよ」






言いたい事はわからなくはないですけどね。





だからと言って、私はあんまり変に機を狙ったCMって好きじゃないんですよ。





その商品がどう良いのかさっぱり分かりませんからね。




それより、洗剤とか歯磨き粉とか堅実に機能の説明をして、美点を伝えてるでしょう。ああ言うのの方が、分かりやすくて好きなんですよ。





そういう意味で象印のCMとか好きなんですけどね。ボケと機能説明が渾然一体となってますから。






「ふむ、分かったね。そういう翡翠のために、とっておきがあるよー。これを見てみるよろし」




いや……。どうせロクなんじゃないから、あんまし見たくないんですが。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



……あ、どうも、テレビの前のみなさんはじめまして。沢祐巳です。



CMのお仕事は初めてで、今はちょっと緊張してます。




えっと名前は沢祐巳。東京都練馬区出身の今年で17歳になります。




身長は148センチ。体重は42キロです。バスト78、ウェスト62、ヒップ80、で靴21.5、頭は52センチです……って、誰も頭のサイズなんて知りたがらないか(笑)




ブラはまだ発展途上のAカップですけど、まだまだこれから大きくなる予定です。胸の形はお椀型で、きゅっと前に張り出してます。乳頭はあんまり大きくなくて、乳首の色はぴんく……です。お姉さまには、可愛いって言われてます。



下着は白のふりふりがついているのを付けてます。下着は実はあんまりこだわらないほうです。



だけど、熊さんパンツとかを期待した人は、反省してください。さすがにそんなのは、卒業してますよ。着替えの時に見られたら、恥ずかしいですし。





他にもスポーツタイプのとか、ちょっぴし大人っぽいのとかも一応持ってます。




服は女子校の紺の制服の他に、メイド服、看護服、スクール水着、体操服、チャイナドレス、スッチーさん、レースクイーン、マニアックな所で、猫装備なんてのもあります。




体も柔らかいですので、どんな淫らなポーズでも、思いのまま。




今ならなんと、私が一体が198000円での特別プライスです。




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「さぁ、どうね!?」




よくもまぁ、こんな馬鹿馬鹿しいこと考えつきますね……。





「何言ってるあるか。ちゃんと機能の説明していたあるよ」





スリーサイズは機能のうちなんですか?




「当たり前アル」




初心者でも音声で使い方を教えてくれるというのが、なんか意味深ですね……





「きっと売れるあるよー。これは、もう間違いないね!」




しかし、どうでも良いですが、なんでこんなに変にエロ臭いんですか?





「エロにすれば、収益の桁が違うね。エロのためなら、悪魔とだって取り引きするのが人間という生き物ね」





このさい何でも良いですけどね……





「あ、そうそう、微妙に今回のはエロかったので、十五禁あるよ。十五歳以下は見ちゃ駄目アル」






え? 今更んなこと言われても。



1月26日






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2004年2月8日







「約束された勝利の剣ぁぁぁぁぁ!」



というわけで、まだやってない人には最大級のFateネタバレモードでお送りする、今回の翡翠の日記帳。



ネタバレ度ハイパーなので、まだやっていない人は視ないことをお奨めします。


それにしても、「約束された勝利の剣」と「エミヤ」は良い曲ですねぇ〜



 今回は物書きらしく、この作品のテーマについて語りたいと思います。語り尽くしたいと思っています

 さて、テーマというのもは、要するに作品が何を伝えたがっていたか、とうことです。
 時々、テーマが大恋愛だ! とか戦争だ! とか言う人がいますが、こういうのは実はテーマではなくモチーフだったりして、テーマとは呼ばなかったりします。
 まぁ、テーマ論は難しいのであまり細かい説明はしませんが、簡単に言いますと、作品を一文に要約するとどういう話なのか、ということです。


さっそく、「Fate」編から言ってみましょうか。

 Fate編では最終的にはセイバーと結ばれることなく、セイバーが消えてしまうという結末です。きっと嘆いた人が多いと思いますし、疑問に思う人もいるかもしれません。グッドエンドで補完したら良いという人もいるかもしれません。

 しかし、多分私が書いても、同じ結末になったなったでしょう。

 何故なら、そこにテーマがあるからなのです。

 セイバーは昔、剣を引き抜き王様になりますが、結果として国を全滅させてしまいます。そのため、「あの時の自分の王になるという選択肢は間違っていた。そして自分が国を守るためにやってきたことも全て間違っていた」という結論に行き着き、聖杯を使って全てをなかったことにしたいと考えます。
 士郎はセイバーのこの考えは間違っていると思うのですが、明確に何が間違えているのか言葉に出来ないでいます。
 そんなときに言峰に、過去士郎が巻き込まれた十年前の厄災、それを聖杯の力を持って、なかったことにしてくれると言われます。
 これで、セイバーと同じ誘惑を士郎は持ちかけられたわけです。
 が、これを拒否します。
 そして、拒否した理由こそが、Fate編のテーマとなるべき部分です。


 つまり、

「どんな悲惨な事でも、一度起こしてしまった事は、元に戻すべきではない。何故なら、その事件があったことで得た物や、成長した事、誇り高き決意、そんな輝かしいものまで否定することになるからだ」


 ということでしょう。
 士郎のその言葉を聞き、セイバーは「自分の人生は決して間違っていなかった。出来る限りのことは精一杯やれたのだから」という所に思い至るわけです。
 このことにより、士郎とセイバーは共に過去の罪の意識から解放されます。


 というのが、Fate編の根本にあるべき部分です。
 だから、エンディングで「セイバーは既に死んでいる」という事実をねじ曲げて、士郎と仲良く暮らしましたというのでは、テーマの整合性が取れないわけです。
 セイバー編にはグッドエンドがない形こそが、完璧な形というわけですね。

 良い例として、宮部みゆき先生の模倣犯に、こういう記述があります。抜粋してみます。

<ホントは違っていた。ホントはこうだった。やめなさいよ。あなんたがそのとき考えたことが本当なんだよ。本当のあんたは、そのときそのときその場にちゃんといるんだよ。
 あんたはいつだって何かをやろうとしてきたんだ。あんたの見に降りかかった災難から立ち直るために、何か道がないかって、ずっと捜してきたんだ。その一瞬一瞬は、いつだってあんたにとっては正しい方向を向いていたんだよ。だけど、ちょっと続けて苦しくなると、すぐにそれが間違っていたような気分になって、やっぱりあれはホントじゃなかったって言い始める。まるで、いちいち「あれは本当のことじゃないです」って断らないと、誰かに叱られると思っているみたいだ。誰もしかりやしないよ。だって、あんたの人生はあんたのものなんだから。過去の厄災だけがあんたのものなんじゃなくて、これから先の人生だって、あんたのものなんだ。誰にもお伺いをたてたりせずに、自分のためになることを自由に考えて良いんだよ>



うぅん。良い言葉ですねー。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

では、次ぎに「Unlimited blade Works」編に行ってみましょう。


 正義の味方を貫いた士郎は、もっと多くの人を救うために、英霊エミヤとなります。ですが、結局は正義の味方というものが、ただの理想でかないという現実の前に挫折し、ついには正義の味方を否定してしまいます。
 そんなエミヤはアーチャーとして現代に召喚され、昔の正義の味方の理想に燃えた士郎に出会います。
 こうして正義の味方に絶望したアーチャーと、正義の味方たらんとする士郎との戦いが始まるのです。それは正義の味方というものに対する、内面的葛藤の物語です




 さて、本編でも語っていますが、そもそも正義の味方というのは、助けたいものしか助けれません。
 一人残らず助けることが「理想」ですが、一人残らず助けることは「現実」には不可能だということです。
 この理想と現実にぶつかり合いなのです

 理想というのもは、決して現実にならないから理想なのです。だから、理想を追い続ければ、その終着駅に待っているのは、「そんな理想はかなうわけがない」という事実です。

 それでも裏切られると分かっていても、偽物だと分かっていてもなお理想を追い求める理由。テーマはもちろんこのことの解答です。


 すなわち



「全ての人を救うという理想が、現実にならないことくらい、最初から分かっている。だけれど、その理想はとても輝かしく気高いものだ。だとしたら、そんな美しく気高い心が、それを追い求める行為が、間違っているはずがない」


 という理想の肯定こそが、このお話のテーマでしょう。

 士郎はアーチャー(という名の現実の壁)に負けずその心を貫き、アーチャーはそんな士郎を見て、気高くて美しい理想を取り戻した。とうお話ですね。

 それゆえに、エンディングロール後に流れるAnswerでは、アーチャーが理想に裏切られたが、自分は間違っていないという答えを得るのであった。

そういえば、偽物「フェイカー」という言葉が何度か出ていますが、これはこの物語の「決して叶わないけれど輝かしい理想」という部分の象徴ですね。

 偽物が本物を凌駕する。それは理想が現実を凌駕することの一種の象徴だったりします。

 ちなみに、このシナリオのグッドエンドで、セイバーが残っているのは、まだ彼女がFate編の解答にまで到達していないからです。まだ中途半端なままなので、答えを見つけるまでは、現世に留まることも許されたりするわけです。



 では最後に「Heaven Feel」編に行きましょう。

 この物語は今までの主人公の在り方というものの、一つの解答が描かれています。

 物語では桜が聖杯の力を取り込んでしまい暴走。世界に害をなす存在になってしまいます。桜を殺せば、多くの人が救われるけれど、桜を救おうとすれば、多くの人が死んでしまう。
 その葛藤の物語と言えるでしょう。


 今まで主人公は切嗣が指し示した「正義の味方」の在り方を信じ、それを貫いてきたのですが、今回はその方法で立ちゆかなくなってしまうのです。

 そもそも切嗣の指し示した「正義の味方」は根本的な部分で、矛盾を内包しています。
 多数を守るために、一人を殺すという方法論。これは切嗣の言うとおり、取りこぼしが存在している以上「正義の味方」としては不完全なものです。だからこそ切嗣は正義の味方にはなれず、アーチャーは理想に裏切られる事になったわけです。


 面白いのは、士郎が「正義を貫き、桜を殺す」という選択をした場合、彼はあらゆる手段を使って、聖杯戦争に勝利する……というバッドエンドに流れていきます。
 これは切嗣が正義の味方であろうとして、なれなかったのと同じ理由に、士郎が落ち込んでしまうからです。


 さて、今回は正義の味方では救えない、正義に切り捨てられたもの、「取りこぼし」を救う物語と言うことになります。

 ということで、テーマは、


「誰かを助けたいならば、全てを救うまえに、まず一人を救うという立場に立たなければならない。それがどんな罪を背負うことであれ、その一人を見捨てている限り、決して幸福にはなれないからである」

 だろうと思われます。



 理想を貫くことよりも、幸せになることを優先した物語と言えるかも知れません。
(実際セイバー編では、理想を貫いたが為に、セイバーと幸せになることはできませんでしたからね)



 理想より幸福を選んだ士郎は、己の過去に復讐されます。されなくてはなりません。士郎は十年前に自分だけ生き残ってしまった罪を、正義の味方であることで、あながってきたからです。

 その代償としてFete編の自己(その象徴しての黒セイバー)と対決し手を汚すことになり、Unlimited blade Works編の自己(その象徴としてのアーチャーの左腕)に呪われることになります。



 こうして士郎と桜はようやく自分の幸せというものを見つけるわけです。


 ただ、桜ルートの考察に関しては、自分でも微妙に自信がないかなかったりします。
 最後に行けば行くほど、「誰かの味方をするということは、その人間の罪も罰もなにもかも全てを、まとめて受け止めることである」とうサブテーマ(?)が妙に強調されているんですよね。

 このお話では言峰が妙に協力的だったりしますが、これは目的が同じだからと言うところもありますが、主人公に共感を感じているからだと思われます。
 言峰自身、取りこぼされて生きてきた存在です。
 また、士郎が桜の罪を受け止めるように、言峰もアンリマユの罪全てを受け止めています。
 結局の所、士郎と言峰は根っこが同じです。自分以外の人間の幸せを望む士郎、自分以外の人間の不幸を望む言峰。
 愛と憎悪は人間の脳の同じ部分から出ているという話もあるくらいですから、二人は同じ思想を持ちながら、その属性が正反対の存在ということになります。

 この辺りの事を考えると、微妙に要素が多くて、このお話がまとまらないんですよね。
 こまったもんだ。
 実はこの桜ルートはプロットでテーマが迷走しているのでは? とか疑問に思ってるくらいなんですが、どうなんでしょう。
 もう少しスッキリした解釈がありそうなんですが、その辺りはもう少し考えてみることにします。


 とまぁ、さらっとFateのテーマ考察してみましたが、参考になりましたでしょうか。

 まだまだ全然考察したりないので、意見反論異論あるかたは掲示板にでも、ちこっと書いてくれると嬉しいです。はい。



2月8日






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