2004年12月3日









「世の中の全ては確率によってなりたっている。確率を極めたものは世界を極めるということである」






……あの、教授。突然何言ってるんです? 頭大丈夫ですか?






「ん。いや最近クレゴリー・ベアの確率の本を読んでな。それで成功も失敗も確率によって左右されるのだなということをしみじみ感じているのだよ」






まったく、確率なんてどこぞの大学教授に任せておけば良いじゃないですか。確率なんか知ったって指針にも何にもなりはしませんね。






「そう馬鹿にしたものでもないぞ。ちなみに調べてみたところによると事故死の確率(交通事故を除く)というのはこのくらいだそうだ」




一年以内 一生
落下死 20729分の1 271分の1
無生物の物理的作用による死 99607分の1 1300分の1
生物の物理的作用による死 1274861分の1 16622分の1
水死 77309分の1 1009分の1
窒息死 49578分の1 647分の1
感電死・放射能など 569563分の1 7427分の1
煙・炎による死 81488分の1 1063分の1
有害な動植物への接触による死 4472460分の1 58312分の1
自然の力による死 183348分の1 2391分の1
毒による死 22389分の1 293分の1
過労死 1428378分の1 18624分の1




無生物と物理的作用による死ってなんです?






「ドアに挟まれて死ぬとかだな」









ヤナ死にたかですね。そりゃ百万に一つもありませんね。じゃ、生物の物理的にっていうのは?









「犬にかみ殺されるなど」








ますますヤナ死に方ですねぇ……








「他の病気や殺人などで死ぬ確率に対して、七〇分の一で事故死で人は死ぬのだ」






ふぅん。意外と少ないですね。






「いやいや、ちなみにこれに入れなかった交通事故での死亡率は七八分の一で、ダントツで多い」










移動距離十億キロに対する死者の割合
0.02
鉄道 0.49
水上 0.4
バス 0.4
自動車 3.1
ワゴン 1.3
バイク 106
自転車 42
徒歩 59





「という感じだ」








バイク死亡率高いですね……。






「死んでくれと言わんばかりに無防備だからな」






ところで自転車や徒歩がなんでこんなに高いんです?





「車にひかれるからだ」





あ、なるほど……




「ちなみに、殺人の被害者になる確率は1/18000、詐欺に遭う確率は1/200、雷に打たれる確率は、1/2320000、悪魔に取り憑かれる確率は1/7000(エクソシストの出動回数から逆算して)だ」






へー、しかしなんですかね。教授。確かにこんなの調べたのは凄いとは思いますけど、だからどうしたって感じですよねぇ……。






「分かっていないな翡翠。つまり1/10の確率があったとすれば、十回繰り返せばそれが成立するということではないかっ!」






必ずということはないでしょうが、その可能性は高まるでしょうね。じゃーどうするんです? 18000人に恨まれてみます? 確かにそんなけ恨まれたら殺されても文句は言えなさそうですが。






「馬鹿者! やはりここは学校一の美少女を彼女にできる確率を見るべきだろう!」






え? 今回はそういう話だったんですか?






「当たり前ではないかっ!」








まぁ、良いですよ。ちょっと真剣に考えてみましょうか。ナンパ学における基本は、数の論理だと言われています。要するに、ナンパは数撃ってナンボということですね。容姿や練度にも左右されるでしょうが、百人に声をかければ、一人くらい乗ってくると言われています。








これは告白にも同じ事が言えて、平均的な男の子が百人の女の子に告白すれば、一人くらい付き合ってくれる人がいるということですね。まぁ、最近は結構軽いノリで付き合えたりするので、もう少し高いかもしれませんが……。






「ふむ、では1/100というわけだな」






いえ、ただこれは相手の練度にもよるので、必ずしもそうだというわけではありません。ぶっちゃけ自分が綺麗だと思っている人間とかはやっぱりこの確率はもっと低くなってしまいますね。






「では、初めての告白だと限定した場合はどうだ?」






初めてですか? うーん。そうですねぇ。そうなると他とそれほど大差ない確率になるとは思いますが。小学生とか中学生になっちゃいませんか?






「くくく、それこそ望むところよ! それで私の一大プロジェクトが始まるわけだ!」






「東京には約五百の小学校があると言われている。まずその全ての卒業アルバムを入手するのだ」






……どうやってです?






「そうだな印刷会社の者ですが落札が判明しましたので回収に来ましたーとか、卒業生で同窓会名簿を作っているとかな。ポイントは春休みで子供しか家にいないときを狙うのが良い」






いや、それはただの犯罪じゃないですか。






「首尾良く五百冊を集めたら、その中で学校で一番可愛い女の子を捜す。そして見つかった女の子に片っ端から告白して回るのだ。今まで君のことをずっと見てましたとかそんな感じで! さりげなくプレゼントも渡す! 場所は吊り橋が良いかもしれぬ。それを繰り返すのだ五百回! 1/100の確率にゆらぎを加えたとしても、五百もあれば十分だろう。こうすることで学校一の美少女の彼女ができることは間違いない!」






「おー、なんと素晴らしいっ! 確率マジックバンザイ!」






あの、教授……。そ、それで本気でできると思ってるんですか?






「五百でダメなら、千でも二千でもやる。全国には五千くらい小学校があるはずだからな」






いや、確かに現役中学生なら、その方法は意外と効果あると思いますし、十分に可能性はありますけど、ネロ教授……









あんたオッサンじゃん(;´Д`)









「……オッサンはダメなのか?」








警察に通報されます。








「馬鹿な! 日本では恋愛は自由ではないのか?」








未成年略取は懲役五年です。






「……そ、そんなぁ」






はぁ、確率にかぶれるのも良いですが、所詮数字なんて数字でしかないんですから、そんなので騙されるのは素人だけですよ。数字が具体性があるなんて思ったら大きな間違いなんですからね。






1/100でも当たることはありますし、99/100でも外れるんですから、おおよそ意味がないですねぇ。









12月3日





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2004年12月14日







「うかー、忙しいよぉ。忙しいよっ。同人誌が終わらないあるよぅ」






まぁ、おおよそ忙しいですねぇ。志貴様。締め切り寸前ですし。






「むー、その割には翡翠なんか楽々モードっぽいあるよ?」






そうですか? この前の日曜日とか大変だったんですよ。






ふむ、それではリアル日記をちょっと公開しましょうか。私がどれだけ大変な休日を送っているか良く分かりますよ。






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翡翠ちゃんリアル日記、12月12日(日曜日)より――






 今日は予想外の雨に降られてしまった。






 昼出発するときには問題なく晴れていたのに、図書館でお昼ご飯を食べる頃になると、アスファルトは雨で濡れて辛気くさい黒色になっていた。誰も今日雨が降るなんて言ってくれなかったから、もちろん傘なんか持ってきていない。濡れて帰るには家までは少々距離がありすぎる。






 日曜日は五時までしか図書館が開いていないから、近くの西区民センターで雨宿りすることにしよう。そのためにわざわざ銀河英雄伝説外伝を図書館から借りてきたから、三時間くらいは楽に雨宿りできる。本を読みすぎて帰る頃に大雨なんてパターンだけは止めて欲しいところだけどね。






 西区民センターの中に入ると、なんだか一階のところが妙に騒がしい。演劇の衣装のような服を着た女の子が、わやわやと楽しそうにお喋りしていた。ここの公民館は時々民間に貸し出して、色んなイベントをやっているから、今回もその口かな? けど若い子ばっかり。本当は無視して三階で雨宿りするつもりだったけど、何やってるんだろ? なんか興味が出てきた。






 私はおそるおそる入り口に近づいた。






「パンフレットをお見せ頂けますか?」






 受付の人は笑顔で言った。みんな私服みたいだけど、よく見たらジャージっぽい。けど、なんだろう。そこにいる人は若いだけじゃなくて、みんな女の子ばっかりだ。






「これ何をやってるんですか? いえ、なんか気になったもので」






「え?」受付の人はキョトンとした。「えーっと、テニスの集まりなんです」






 テニスの集まり? さっきから流れている司会進行役っぽい人のマイクの声の感じから、てっきり演劇か何かをしてるんだと思っていたんだけど、違うのかな? 打ち上げかなにかなのかなぁ……。本当は入って見学したいところだったけど、なんか入るのにパンフレットがいるみたいだし、どうも入れないみたいだ。話のネタになりそうだから、できれば色々見ていたかったんだけど、仕方がないか。






「いえ、ちょっと何をやっているのか気になったものですから」






「あ、そうなんですか……」






 私はまだなんのことやら分からなかったけど、それ以上の興味をなくして三階に上った。ふかふかのソファーに腰掛けて、サントリーの伊右衛門を飲みながら、銀河英雄伝説の外伝を読む。やっぱりキルヒアイスは格好いい。






 しばらく本の世界に熱中し、三時間ほど読書を楽しんだ。






 読み終わる頃には上がっていると思っていた雨だったけど、止むどころからますます強く窓を打ち始めた。まいったなぁ。なんか最悪のパターンじゃんこれって。けど、帰らないわけにもいかないし、BOOK OFFにでも行って文庫本漁りしながら、雨宿りしようかな。






 本を鞄の中に入れて、外に出ようとしたとき私は、一回のイベントスタッフらしき人が会談で掃除しているのを見かけた。十代後半の女の子で黒いジャージを着ている。












 ――ちょっと待て!







胸に学校名が書いてある。これは……

























 これコスプレじゃないかぁぁっ(゜□゜;)!!










 そ、そうか。テニスの集まりというから、何かと思えば、「テニスの王子様」の集まりだったのか! なんたる不覚。まるで気づかなかった。コスプレと言っても基本がジャージだから、そんなに違和感がないんだよな。演劇の集まりみたいに見えたのはそのせいか。






 うわぁ、なんかいろんな意味でショック。






 日常世界が異界と入れ替わって、歌え踊れのお祭りが行われたいたにも関わらず、隣で寝ていた気分だ。くそ、そうだと最初から知っていれば、もう少し観察したのに……。気づくのが遅すぎた……。






 それにしても受付の人も「テニスの集まりなんです」とは、ものすごい微妙な言い訳をしたものだ。「テニスの王子様のコスプレ&ダンパイベントなんですよー」とは、言いずらかったんだろうなぁ。それに一般人がテニスの王子様を知ってるとも限らないしな。うぅん。けど、なんか微妙に騙された気分……。






 今日は妙な体験をした一日。隣にいる人が一般人だと思ったら大きな間違いだということの教訓なのだろうか。今度からはもう少し観察力を養うことにしよう







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 ちなみにあまりにも衝撃的だったものですから、ダンパの主催者にこういう体験したんですよーというメールを送りつけてしまいました。






 我ながら何やってるんですかねー。ははは。






「つか、滅茶苦茶余裕すぎあるよ。翡翠!? 銀河英雄伝説読んでる場合じゃないね!」






 なにしろ私、ラインハルト×キルヒアイスですからねー。もう激ラブですよー。ラインハルト様……宇宙をお取り下さい……ってなもんですよっ!






 越前くん×手塚部長とかはどうしても思えないですよねぇ。もうちょっと色気があれば良いんでしょうけど。






「せ、生活に同人誌のドもないね……」






 いや、頭の中では色んな男の子がかけられてるので、そうでもないですけどね。






「ずるいあるぅぅ! ワタシがどんだけ苦労してると思ってるか、信じられないねー! 現実逃避は良くないね。翡翠もとっとと自分の分をやってしまうねー」






 ははは、何言ってるんですか。志貴様。






 いいからてめーは黙って自分の担当をとっとと終わらせろ( −_−)ノ。殺すぞ。






「……」






 分かりましたか?(にっこり)






「は、はいある……」






 それではみなさん。同人誌が落ちないことを祈っておいてくださいねー。









12月14日









2004年12月23日







――お、終わった。





「何人生が終わったみたいな顔してるあるか? 翡翠にそんな顔をは似合わないよ。蟻んこに小便かけて、『ぐへへへ、天の裁きじゃー』とか下品に笑ってるほうが100倍らしいね」







志貴様。前頭葉直下型痴呆症のボケ老人のような台詞を吐くのは止めてください。







「それはともかく、何が終わったあるか?」







同人誌の話ですよ。







「まぁ、今回もソコソコ大変だったあるねぇー」







アレのどこがソコソコですか!? 滅茶苦茶死にかけたじゃないですか! まったく毎回毎回洒落にならんところまで引っ張る志貴様の責任です。







「やれやれね。翡翠はいつも他人に責任転換するね。そうやって自分は悪くない悪くないと思っていれば良いね。即物主義者は心が貧しいから嫌ね〜」







後の遺恨にならぬように、やっぱりここで殺しておきましょうかね……。








そんなわけで、今回の同人誌のお話――








○11月15日――
 コミケの合格通知が来る。前回二回も落ちてしまったので嬉しい。今度こそ本を出さないといけない。さっそく志貴様にメールで連絡を取った。







「そう言えばそんなイベントもあったあるねぇ。完璧に忘れてたよ。しかし締め切りが12月15日、滅茶苦茶時間がないよー」







ちなみに、このころ私たちはホームページの大改造の上リニューアルをするべくトップページとかを作っていたりしていました。ホームページもいい加減に更新するつもりだったのです。










「まぁ、良いね。トップページを作ってから同人誌を作るね。けど、そこから漫画書くのはキツイあるなー」







 こ、この人、この期に及んでまだホームページのイラスト描きを続行するつもりなのか!? ホームページなんかいつでもできるけど、先に同人誌の方を作れよっ! 
 本来の私ならそう突っ込むところでした。
 しかし……。実際問題、ホームページのほうも作っておきたい。もう全然更新しないことこの上ないこの状況が延々と続いている。これではこのページが何のためにあるのか、なにやらさっぱりではないか。それにここでホームページを作る作業が滞ると、志貴様のテンションがまた下がってしまうかも知れない。それは……怖い……。けど、同人誌も時間ないし……ど、どうしよう……。
 私は葛藤していました。










○11月16日――
 結局志貴様がやる気になってホームページを作成している以上、これは止められない。止めるわけにはいかない。下書きはほとんど終わってるみたいだし、意外と三日くらいで終わるかも知れないし……。










○11月23日――
 ホームページのトップイラスト暫定版が完成する。この時点で、すでにホームページなんか作ってる場合じゃないよなぁ――ということに気づいていたのだけど、もうちょっとで完成しそうなので口に出せない……。
 念のために言っておくが、見守る方もかなり根性のいる作業なのです。まさに自分で自分の首を絞めてるわけですからね。
 しかし、自分の首を絞めていると分かっていても、私はHPは更新したかった!
 私の葛藤はそれはもう凄まじいものでした……。










○11月28日――
 トップイラスト完成。が、作業中断を決意。もう限界です! これ以上志貴様にホームページを作らせてはいかん! こんなにホームページを作る作業に時間がかかるとは思わなかったっ! これは予想外すぎる!










し、志貴様。もうホームページのことは良いですから、同人誌を書いてください。時間がありませんよ。







「んー、そうねぇ〜。確かにホームページなんて作ってる場合じゃない気がしてきたよー」







 な、なんて気楽な人なんだ……。実は一週間くらい前からそんな状態だったんですけどね……。もしかして私は志貴様の楽観姿勢を甘く見ていたのだろうか?







○12月01日――
 タイトルの話をする。(詳しいことは同人誌に書いたのでそっちを参照)
 もともと同人誌は志貴様がメインになってるところがあるので、私に割り振られたページ数はそんなにない。もうちょっとで私の担当分は終わるかな。
 志貴様は同人誌の漫画のネームとイラストページを作ってる。










○12月05日。締め切り10日前――
 私の担当ページは終了。
 しかし志貴様担当分、表紙も含めて未だに一ページも完成せず。
 なんでも漫画のネームを書いていたけれど、微妙に慣れないのでまだOKが出ないらしい。
 ちなみに私は内心ビビリ始めていた。










「これはアレね。もしかしたら間に合わないかも知れないよー」







そ、そうですねぇ。まぁ、イザとなったら表紙をサラっと書くか、本文をサラっと書くしかないですねぇ。







「いや、それはダメよ。クオリティはなるべく上げたいね。こうなったらアレね。割り増し料金払って、ちょっと待って貰うしかないねっ!」







……まぁ、最悪そうなるかもしれませんね。







「いや、最悪というか既に私の中で締め切りは21日と決まってるあるよ」







え!? もう決まってるんですか!?







……私はこの時点で激しく嫌な予感がしていた。
 というか、志貴様が割増料金の期間のことまで知ってるのは痛すぎなのです。どうも志貴様は最終日にキッチリ間に合うようにスケジュールを立てて、仕事をするタイプなんですが、大抵の場合そのスケジュールからちょこっと足が出てしまうのです。そのため大抵私が後始末にかり出されることになってしまうんですねぇ……
 あぁ、印刷所の人に謝るようなことは起こして欲しくないです……。









○12月06日――
志貴様は次の日を表紙の締め切り日だと勘違いしていて、表紙ができないーと嘆き悲しでいました。









「ど、どうしよう……翡翠……」







いえ、志貴様。表紙の締め切りは15日です。7日なのは、五色使ったものだけですよ。







「なに!? そうなんあるか? 何だ心配させるの良くないねー。だったらもう表紙は楽勝あるよー」







だと良いんですが……







○12月07日――
志貴様。表紙が気に入らないと言って、表紙案を丸めてゴミ箱に捨てる。









……す、捨てたちゃったよ、この人











○12月08日――
志貴様。爆弾発言する。








「すまん。翡翠。今日からちょっと旅行に行ってくるよ」








って、旅行!? この時期に……!? キャンセルしなさい。そんなもん!







「我ながら、旅行なんか行ってる場合じゃないと本気で思うし、ちょっと罪悪感あるけど、キャンセルできないね。これもまた大人の事情というやつあるよ。付き合いゴルフを断れないようなもんよ。そういう厳しい事情分かって欲しいねー」








いや、けどですね……








「じゃ、行ってくるねー」











うわぁぁぁ(゜□゜;)!!








志貴様は……三日くらい帰ってこなかった……









○12月12日――
旅行から帰ってきた志貴様は言った。









「旅行前は調子が良かったのに、帰ってきた途端スランプになってしまったよー」








……







○12月13日――
 15日が表紙締め切りなので14日の夜に、私に送るようにとメールを送る。










「無理くせー(;´Д`)」









わたし、なんでこの人と友達なんだろう……









○12月14日。表紙締め切り一日前――
志貴様。覚醒。









「すごね、翡翠〜。なんかここに来て一皮むけたよー。すごいペースで描けるよー、クオリティーも高いよー」









 今までのスランプが嘘のように作業効率が一気に今までの倍以上になり、作品クオリティーが跳ね上がる。
 志貴様は尻に火が付いて、全身に燃え広がって死にかけの時に、サイヤ人のごとくスーパー化する困った体質なのです。
 ぶっちゃけ、この力を平常時に普通に出してくれれば、本気でありがたいんですけどねぇ……。








○12月15日午前3時――
 深夜にまで及んだ作業の末、なんとか表紙が完成する。(現在トップページにあるやつ)








「生と死のギリギリの中でまたワタシは一つ成長したねー(´д`)」








 事実なんでしょうし、表紙が良い感じにできたのは私も恙なく認めるところなのですが……。本来の締め切り当日時点で志貴様の本文の担当分の完成度〇パーセント今までで最大クラスの時間のなさに突入してしまった……。










○12月16日――
 ロスタイム突入!
 志貴様が持ってきた漫画のネームを、何の容赦も仮借もなく一蹴のもとで全部にしてやりました。










「な、なにするか!? 私が表紙を書く合間を縫って頑張って作ったネームよ。これのどこが気にいらないあるか!?」







こんなややこしいネームで、締め切りまでに終わるわけないでしょうが!? アホですか! 自分でも分かってるでしょうに!







「いや、案外できちゃうもんよー」







アホなこと言うのは止めてください。未練はこの場で断ち切っておきましょう。







「うわぁ。ネームを燃やすなある! 本気でヒドいね。普通破くとかよ。燃やすとは一体どういうことか!? 信じられないある。翡翠ヒドすぎるねー。鬼よー。悪魔よー。最悪よー」







はぁ、私がもっと簡単で時間内に終わる原作書きますから、それで書いてください。







「むー。仕方ないね。背に腹は替えられないある」







○12月20日。午後七時三十分。締め切り十四時間三十分前――
 なんとか順調に完成への道筋を進む。その間私は他のページをつくっておく。はじめにや奥付、対談ページなどなど。
 締め切りは明日の午前十時……。志貴様漫画ページのクリンナップ中。この分なら間に合うか?







「翡翠。大変なことになったあるよ!」







どうしたんですか? 志貴様。







「スキャナーが壊れてしまったよ(///∇///)」










どぎゃんすってですか!?









「落ち着くね。翡翠が慌てていては話にならないよー」







た、確かにその通りです。しかしこのタイミングで壊れるのは、ちょっと不味いですね。七時三十分じゃ、電気屋さんも締まってるでしょう。







「うむ、そうあるよー。困ったね」







では仕方ありません。スキャナーを思いっきり叩いてください













「む、何故か? 叩いて治るのは日本製品だけね。スキャナーなんて中のパーツはほとんど中国製あるから、叩いても治らないよ」







いいから私を信じてやってください。







「むぅ、分かったね」







ガンガンッ!







「でも、こんなことして修理不可能なくらい壊れたらどうするね?」







その時はヨドバシカメラにでもスキャナー買いに行ってください。幸い午後九時までなら開いてますから、完全に壊れてしまえばもう憂いはないでしょう?







「むー! なにか! そんな作戦だったあるか!? それはヒドイよ! ん、あれ……?」







どうしたんですか?







「叩いたらスキャナー治ったよー」







ほら、みたことか。







「いや、翡翠、一秒前まで壊す気まんまんやったあるよ(゜□゜;)!!」







知りません。







「……」






○12月21日。午前0時。締め切り10時間前――
 漫画ページのクリンナップ完成。









「翡翠ー。もうダメね。このペースでは終わらないよー。漫画にデジタルトーンを貼ってるだけで夜が明けてしまうよー」







ええ、その危険性はありますね。







「仕方ないね。翡翠。漫画ページの台詞を入れるね。原作を書いたのは翡翠なんあるから、そのくらいできるあるよね?」







分かりました。作業分担ですね。ではできたページからどんどん送って下さい。







「OKねー」







 漫画ページが一ページ目、二ページ目、三ページ目とトーンを張り終わったところから、どんどん来る。ちなみにこの作業と平行して、私が作れそうなページを作成。










ふぅ、意外としんどいですねぇ。漫画に合わせて台詞をカットしたり増やしたりするのが、結構面倒です。ん。なんです? 三ページ目のこの展開? 私の原作にはこんなのなかったと思いますけど。







「あぁ、それはワタシのオリジナルよー。本当は翡翠に台詞入れて貰うつもりなかったから、ある程度こっちで自由に書いたよ」







そうなんですか……。ふむ、まぁ仕方ありませんね。なんとかしてみましょう。







「ほい、四ページ目出来たよー」







……ちょ、ちょっとまってください!? 四ページ目でラストから二ページ目のエピソードが来てるじゃないですか!?







「あぁ、やりにくかったから順番入れ替えたよー」







いや入れ変えたって……。ここまで来ると、ほとんど別作品じゃないですか……。ということは、なんですか? 私は志貴様の書いた漫画に合わせて、超突貫でお話しを作っていかないといけないんですか!?







き、きつ……







「ボサっとするなある。とっととヤルね。時間ないよー」







わ、分かりました。まぁ、ベースが私の作品ですから、そんなに極端に逸脱してはないと思いますけど……。







「ほい、次のページ」







な、なんと!? ここでこっちが来るんですか!? 自分で書いておきながら驚きに満ちた展開になってきました。そう言えばエンディングパータンも8パターンくらい考えて、志貴様に渡してますけど、一体どのエンディングに向かってるんでしょうか……。







自分の書いてる作品の一ページ先の展開が読めないって、結構究極ですね……。それなのに、台詞を入れてるって……







○12月21日。午前5時。締め切り5時間前――
 このころになると手が空いた隙間を縫って知り合いに、メールを送り始めます。修羅場モードゆえに頭が変になってました。メール貰った人、変なメール送って申し訳ないです。








「翡翠。またまた大変なことが起こってしまったよ!」







志貴様の大変は聞きたくないんですけど……。まさかパソコンが壊れたとか言うんじゃないでしょうね?







「ビンゴね」







……







「パソコンが起動しなくなったよー。どうしよう?」









そんなもんまで面倒見切れません! 自分でなんとかしてくださいッ!







「ひ、ヒドイある〜。ワタシが困ってるときは助けるね。世の中持ちつ持たれつって言うあるよー」







し・る・かーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!








○12月21日。午前8時。締め切り2時間前――
 志貴様のパソコンの変調はぶった叩いたスキャナーが原因だったらしい。なんとか再起動はしたもののもの凄く時間のロス。しかも何故かパソコンがやたら重くなったので、作業効率が落ち始める。
 平行して作っていたはじめに、奥付、骨休め、対談(作業しながら会話を取った)などんど完成。印刷紙ながら漫画の台詞張り。










困りましたね。展開が違うものだから、オリジナルで台詞を考えないといけないんですけど、突貫作業過ぎて良い台詞が思い浮かびません……。







「そういうのでワタシを頼ろうとするなあるよ。最後に頼れるのは自分だけよー」







三時間前と言ってることが違う……







○12月21日。午前10時。締め切り0時間前――
 残り3ページ。










「うかぁー。時間がキタある! 間に合わないあるー。どうするか!? どうするかぁぁぁ!?」







わ、分かりました。仕方がないので、もうちょっとだけ印刷所の人に待って貰います。







「流石は翡翠ね。頼りになるよー」







こんな時だけ頼りにするのは止めてください……








電話で印刷所の人に謝って交渉。なんとか二時間ひねり出すことに成功する。










「よーし、なら続きやるよー。急ぐねー」







あいあいさー。








○12月21日。午前12時。締め切り2時間オーバー
 約束の時間なのにまだ終わらない。
 このとき私は漫画のラスト一ページ目の衝撃のラストを知り、どうやってお話しの辻褄を合わせるのか大いに悩む。
 やはりラス2エピソードが4ページ目に行ったのが辛い……









「お、終わらないある〜。まだ終わらないよあるよぅ〜」







し、志貴様。大変なことが!









「もーー! 今度は何あるか!?」









プリンターのインクがなくなってしまいました……。










「アホかぁぁぁぁぁぁ(`□´)ノ プリンターのインクくらい補充しとくね!」










あんたがあんなに黒をたっぷり使うような背景にしてるからじゃないですか!? 私ののせいにしないでくださいッ!







「結果論でモノを言うなあるぅぅぅ!」










それはそっちでしょうがぁぁぁ!










○12月21日。午後2時。締め切り四時間オーバー










か、完成しましたよ! 志貴様。







「しかた翡翠っ!」







ええ、長く苦しい戦いでした……。しかもまたしても締め切り破ってしまいましたし。







「まったくよ、ワタシもう60時間くらい寝てないから、頭ふらふらでわけわかんないあるよ」







何にしても完成して良かったです……。ほっと一息ですね……







「さて、それじゃとっとと印刷所持っていくね。ワタシは飯食って風呂入って寝るね」








……う……やっぱり印刷所の人に謝ったり、嫌み言われたり、怒られたりするのは私の役目なんですね……。







「そうある。翡翠にはそんな役目が相応しいね。それじゃ後は任せたねーε=( * ̄▽)ノノ」









また逃げられた……はぁ、仕方ありません。謝りに行きますか……。







あぁ、外に出ると太陽が目に染みますよぅ








かくして私たちの同人誌作りは終わりを告げました。それにしても、なんで毎回毎回こんなになってしまうのでしょう。わけ分かりません。はぁ、せめてもう一人一緒に同人誌を作ってくれる人がいれば、私らこんなに苦労しなくて済むんですけどねぇ。ま、そんな奇特な人はおらず。これもまた世のさだめでしょうか。







12月23日





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2005年1月9日







完全に冬休みボケで思考が停止しておりました。これがもまた五月病の一種なのかなぁとか思わなくはありません。







コミケのことでも書こうかと思ってましたが、なんだか面倒になってきたので、違うことを――







「世の中、間が悪いということはあるものだなぁ〜。翡翠」







おやおや、これはネロ教授。どうしたんです? 随分としょんぼりした顔をしていますが。







「うむ、実はな。この正月にピピ島に行く予定だったのだ」







あー、そう言えばそんな話してましったけ? 残念でしたね。スマトラ大地震とかで今は向こうは大変そうですねー。なんでも津波被害で十五万人以上死んだとか。日本では対岸の火事を物見櫓を作って見物してる感じですが。







「あまり不謹慎なことを言うと、読者からクレームが来そうだがな」







まぁまぁ、ところでいつから行く予定だったんですか?







「去年の31日からだな」







でも良かったじゃないですか。もし、地震前に行っていたら今頃海の藻屑だったかもしれませんよ。







「しかしだ! それで旅行代理店に連絡してみたわけだな。どことは言わん。HISなどと口が裂けても言えるものか。おのれぇ。HISめぇ……」







いや、名指しで旅行会社の攻撃は不味いでしょう……。教授……。







「良いのだっ! それで旅行代理店に連絡したら、なんて言ったと思う?」







さぁ







『ツアーの行くところは比較的被害が少なかったため、旅行としては問題有りません。もしキャンセルなさるつもりなら、正規のキャンセル料を払って頂きます』







「と、こうなのだっ!」







あー、けど、旅行代理店の気持ちも分からなくはないすけどねぇ。年末のかき入れ時に、キャンセルの嵐じゃ、会社も大変でしょうし……。







しかしその辺りの事情を差し引いても、凄い対応ですよね。私はあまり詳しくはありませんが、向こうでは伝染病とかの心配もあるんでしょう? インフラも寸断されてそうですし、観光っていっても楽しめなさそうですからね。







「違う! そのことが問題なのではない!」







え? 違うんですか?







「全然違う。私はキャンセルなどするつもりは欠片もなかったのだ!」







……あそこに行くつもりだったんですか?







「両校代理店が問題ないという以上、こちらが否を唱えるわけにもいくまい。行く気バリバリだった」







「ところが出発当日になって、私以外の他のツアー客が全員キャンセルしたから、私も行くにいけなくなってしまったのだ」







「まったく、信じられない話だとは思わんか? 影響ないと言っておきながらどういうことだ!」







あの……教授、もうちょっと常識をわきまえてくださいよ。向こうは十何万人という人が死んでるんですよ。そんな中で呑気に観光なんかするなんて、できるはずがないじゃないですか。







「あぁ、まったく分かっていないな翡翠。まるで分かっていない。これだから翡翠は考えが浅いと言われるのだ」







「考えても見ろ、観光地というのは観光ビジネスによって成り立っているところだ。災害に遭った地域で遊んでいたら不謹慎と思って旅行を中止すれば、観光客は激減っ! 結果として地震被害よりもはるかに大きな経済的被害を被ってしまう







「分かるかね。翡翠。現地人だちはこういう苦しい時だからこそ、お金を落としてくれる観光客を望むのだよ。我々が彼らにしてやれることは、義援金を集めて渡すことではなく、家や家族を亡くしマッチ売りの少女のごとく不幸のどん底にあるものたちの目の前で、それはもう見せつけるようにド派手に遊ぶことなのだっ!」







……理屈が正しいのは認めますけど、どっか根本的な部分で間違ってません?







「私も観光ができてハッピー。現地人も仕事ができてハッピー。みんなが幸せになれるではないか?」







「不幸にあったものたちが、いつまでも暗い生活をしていなければならぬという法はない。現地の人々も明るいイベントをして、みんなを励ましているではないか。我々が明るい顔で『や、大変だったね。まぁ、人生山あり谷ありだから面白いんだよ。ところで、この辺りに幼女買える所はないかな?』くらいのことが言えなくてどうする!?」







その物言いは既に犯罪級ですが、幼女を買うのは真性の犯罪です。







「む? タイとかインドネシアでは合法ではなかったか?」







「えーっと、確かに強姦はいかんが、喘ぎ声を出せば和姦成立とか、そんな感じだったような……」







あんたタイやインドにどんな偏見もってるんですか。







まったく、やれやれですね。教授の現地行きが中止になって本当に良かったです。この人のことですから、本当に気にしないで思いっきり遊んできそうですからね。







ところで私の家の町内会でも、義援金を集めに来ました。







私は『お金は家訓で出せないですけど、古着で良いですか?』と言って、もう着なくなったセーター(袖がほつれたりして)を三枚くらい渡しました。







そしたら冷凍マグロよりもさらに冷たい目で見られたんですけど、なんでなんでしょうね?







「日本は冬だが、向こうは毎日三十度以上だからな……。セーター貰っても嬉しくないと思うが……」







……。







あぁ、なるほど。それは迂闊でした。







今度はエリが伸びて着なくなったTシャツでも渡すことにしましょう。







「……普通に金を渡せよ」






いや、だから家訓が……




1月9日









2005年2月6日





HP業務をまとめてお休みしてました……。







というかなんか洒落にならないことになってました。なんというか人生色々あるなぁーって感じです。







それではその今回のお話――







異変に気づいたのは、一月の半ば頃、妙に本が読みにくかったのです。読んでいると目がチカチカするというか、ぼやけているというかとにかく変な感じでした。







多分、眼鏡の度が合ってないんだけなんだなーとか思って、眼鏡屋さんに行って新しい眼鏡を買って、それで数日過ごしていたのですが……。







ところが、ほんの数日でその眼鏡の度も合わなくなってしまいました。







冗談ゴトじゃありません! 急速に視力が落ちていくのでかなり本気でビビリました。







まったく、一体何だというのでしょう? それで仕方なく眼科に行ったところ――







こう診断されました。







「これは白内障ですね」







は、白内障!? ちょっと待って下さい。白内障っていうと、お爺ちゃんお婆ちゃんの目が白くなるあの白内障ですか!?







「そうですねぇ。目の中のレンズの役割をする水晶体が白く濁ってしまう病気ですね。原因は遺伝性、外傷性、あとアトピーからくることもあるんですが、大抵の場合は老人性のもので、若い人がこの病気になるケースはかなり珍しいですね。あなたくらいの年だと一パーセント以下でしょうね」







マジですか? かなりショッキングなんですが……。







「しかし間違いないです。えーっと、この写真を見ても分かりますように、水晶体の後ろの部分が濁ってしまっているんですね。後のう下白内障というヤツでしょう。光を見ると靄がかかってるんじゃないですか?」







……。あの、それでこれって治るんですか?







「手術すれば」







薬物では?







「治りませんね」







ちなみに、どんな手術をするんですか?







「まず目を切ります」







はい







「おもむろにレンズを埋め込みます」





















うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!







そんなのイヤですよ! なんで眼球にそんなもん埋め込まないといけないんですか!? 拒絶反応バリバリです。







「大丈夫ですよ。痛くないですから」







手術が痛かったら拷問じゃないですかぁぁぁっ!







あぁ、しかし目のトラブルは本気で洒落になりません。臓器と違ってパフォーマンスの変化が分かるし、鬱陶しい……。とかなんとか言ってる間に、どんどん目が悪くなっていく……。うぅ、これは怖い、本気で怖いですよぅ……。







とにかくパソコンの文字が見えないのは、かなり驚異的に問題です。フォントを大きくしても輪郭がぼやけて見にくいから、長文書く気になれないし。







なにより読書ができないのが痛すぎです。どうも目に入ってきた光が拡散するらしく、白地に黒文字が一番見にくいんですよねぇ。







うぅ、仕方ありません。ここまで来たらどうやら手術しかないようです。







かくして私は眼科に手術の予約を入れ、手術を一週間後に控えることとなりました。







それにしても一週間も、パソに触れず小説も読めないとはなんと残酷な苦行か……。







仕方ないので、今までずっと貯めていたラジオドラマでも聞くことにしましょうか。あぁ、星界の紋章とか思い切り聞きそびれてましたからねぇ。やれやれなのです。







さて、白内障の手術ですが、一応15分くらいで終わるお手軽なものなそうですが、経過を見るために入院しなければなりません。







そんなわけで入院したわけですが……







うぅ、周りにいるのお爺ちゃんとお婆ちゃんばっかりです……。そりゃねぇ。白内障なんて私の年齢でかかるもんじゃないですよ。話を聞かれたら、みんなに「へぇ、若いのにねぇ」とか言われる始末。







ていうかなんで私が? とか本気で思いますねぇ……。まぁ、これが癌でなかっただけマシだと思っておけば良いんでしょうが、それでも私は文句を言いたいです。なんで白内障なんしょーねぇ……。







さて、そんなこんなで手術の時が来ました。







当然、こんな手術に全身麻酔なんかつけてくれるわけがなくて、部分麻酔です。







目にメスとか入るの目撃しないといけないのは冗談抜きで勘弁して貰いたいです。







「ははは、大丈夫ですよ。脳手術のときなんか、意識あるのに脳を手術しないといけないんですよ。それに比べれば、ちょっとメスが目に入るくらいなんですか」







そういう問題じゃなーーーーーい。







しかも、この白内障の手術、水晶体を完全に除去してレンズを埋め込むので手術後はピントが合わせられないそうなんですよねぇ。それだけでもなんか不便さがマックスに届きそうで……。はぁ、本気でやれやれなのです。







「それじゃー、やりますよー」







うぅ、分かりました……。やってください。







ザクザクザクザクザク――







うぐぅー。







かくして手術は終わりました。しばらく眼帯生活です。(片目だけど)







手術中は眩しくてなにがなんだかさっぱり分からなかったのは救いでしょうか……。







はぁ、目が見えないって不便ですねぇ。本気で……。







漫画やアニメや小説が見れなくなるってのは、こんなに不便なものだったのかと改めて思い知りましたよ……。







かくしてここのところ、まともに活動する気も起きなかった、翡翠さんでした。







あぁ、今度は反対の目の手術もしねーといけないし……。







なんていう風に嘆いていると志貴様は言いました。







「まったく歯と良い目と良い。翡翠はそんなのばっかりネ。ワタシなんて虫歯すらないあるよー」







ゲームを一日10時間しても、いまだに視力が1.2の志貴様が化け物なんです!







あんたどういう目をしてるんですか?







「目は鍛えれば鍛えるほど強くなっていくね。目が悪くなるなんて軟弱な証拠よー」








「死にかけたら、スーパーパワーアップするみたいなもん?」








……あんたはどこのサイヤ人なんだ。






「まぁ、癌には気を付けることね。翡翠死ぬときはそういう病気で死にそうあるしね」







ヤなこと言わないで下さい……。







あぁ、死神の目の取引がしたいです。視力3.6が羨ましい。







そんなわけであと日記帳は来週からは普通に更新予定ですんでー。よろしくお願いします。




2月6日











2005年2月17日











「はぁー、平和ねぇ。ずずずずーーっ、あー、お茶が美味しいよー」







し、し、志貴様ぁー。大変です! 事件ですよっ!







「むー、なにか? 翡翠? そんな大あわてで」







殺人事件ですっ!







「む、なにか? ということは、今回はワタシと翡翠が殺人事件の謎に挑む、ミステリーな展開あるか? なんかそれは燃えるあるネ」







なに寝ぼけてるんですか……。んなことあるわけないじゃないですか。新聞ちゃんと読んでますか? 見てくださいこれ。







「ん、寝屋川の小学校での殺人事件あるか? 教師を刺した? なんね? 犯人捕まってるあるよ? どこがミステリーか? ワタシは何を解決すれば良いね?」













いや、ここどこだか分からないんですか?







「さぁ?」







もー、T(友達の名前)の地元じゃないですか。私たちも何度も遊びに行ってますよ。先月も行ったじゃないですか。






「そうだったあるか?」






そうです。寝屋川郵便局分かりますか?






「あー、あの第一回コミケに応募するときに使った郵便局か。確か夜の7時まで開いてたから、辛うじて間に合ったアレね」







ええ、そうです。その隣にローソンがあったの覚えてますよね?






「あったね」








その裏に公園ありましたよね。







「マンション付属公園みたいな?」







そうです。あのちょっと駅の方に行ったところにある小学校ですよ。







「おお! あそこか!」







そうですよっ!







「……今、唐突に思い出したあるが、翡翠確か前にあの小学校に夜中、侵入したとか言ってなかったあるか?」







はぁ、ぶっちゃけ、してました。だから今回の話をですね――







「……」







あの……志貴様?







「翡翠(゜□゜;)!! 犯人はお前ねっっ! 死ねっ!」







いや、だから犯人は捕まったんですってば……。








――っていうわけで今回はそんな感じのお話。








「しかしねぇ。翡翠。こういうタイムリーな時期に自首するのもかなりどーかと思うんあるが。PTAから苦情くるあるよ」







学校に侵入することなんて、良くある事じゃないですか。志貴様だって肝試しとかしたでしょう? なんていうか、たまたま前に侵入したことのある学校が殺人の現場になったというだけで、ただの偶然です。結構昔の話ですし、まぁ時効ですよ。時効。







「また時効とか言って言い逃れしようとするね。まぁ、いいある。なんで学校なんかに侵入したね?」







えーっとですねぇ。あの日は初本町公園で野宿をしていまして。







「この時点でかなり凶悪におかしいんあるが……」







ほら、私もあの頃は若かったですから。







色んな場所で野宿してましたよ。病院の受付とか夜間でも開いてるので意外と穴ですし。エレベーターなんかも雨露が防げて良い感じなのです。







「深くは聞かないあるよ……。それで?」







ええ、実は本当は友達の家に泊めて貰うつもりだったんですけど、時間も午前2時を過ぎてしまって、連絡もつかなかったので、仕方なく公園で横になってたんですね。







ところがです。そこに雨が降ってきてしまったわけですよ。あの公園には雨を防げるようなものがありませんでしたから、仕方なく場所を変えなければならなかったのです。







「それで学校に侵入したあるか……」







まぁ、大ざっぱに言うと。







個人的評価でいうとあの事件の起きた学校は意外と夜間の侵入が難しい部類に入るんです。普通学校に侵入するときは横の柵をよじ登るか、門柱をよじ登るかが基本となります。







ところがあの学校の南側は道路に面していて、その道路は国道170号線から、寝屋川駅までの車の抜け道で、夜間でも結構車の通りが多いんですね







そして東側は当時、住宅作ってる最中でメチャクチャ見晴らしが良いわけですよ。その近くには大学があって、夜行性の学生共が時間を問わずいるわけです。







北側は住宅密集地で、東側はどうなのかは確認できませんした。







戦国時代に例えるなら、駿府城みたく難攻不落な小学校でした。防御力高かったですよ。







「ワタシ学校に防御力高いって評価下したやつを初めて見たね……翡翠、相当なアホよ……。で、結局どこから入ったね」







西門からひょいっと。







「最悪ある……人間のクズある……」







やれやれですねぇ。志貴様には夜間の学校に行けば、十年前に死んでしまった萌えな女の子の霊とのフラグが立つかもしれないっていうのに……。







学校に肝試しに行けないような人間は、せいぜい家の中でテレビゲームでもしていれば善いんですよ。







「それで? 結局どうだったね? 小学校」







私が忍び込んだときは宿直の人はいないみたいでした。案外不用心なものです。







できれば教室で寝たかったんですけどさすがに、それは無理でした。プロさんならガラスを割って職員室に侵入、机の中から生徒から取り上げたPSPを奪取するとかなんでしょうけど、私のモットーは、『経済的被害』『精神的被害』を与えないというものでしたから、そんなことはしません。







そんなことをしたら私はただの犯罪者になってしまいますからね。







「というか、学校に侵入するのは完璧に犯罪だと思うんあるが……」







いいえ、犯罪じゃありません。未成年のうちは!







「今回の犯人は思いっきり未成年だったような……」







だから言ってるじゃないですか。経済的被害精神的被害を与えてないなら何をしても大丈夫。それが未成年の特権っ!







ともかく、それで寝ようとしたんですが、いかんせん二階へのシャッターが閉まっていて上がれないんですね。







校舎の床っていうのは、分かると思いますけどメチャクチャ冷たいんですよ。夏でしたけど段ボールがないとさすがに眠れません。







「んで、どうしたね?」







下駄箱のところには木のすのこがあったので、そこで三時間ばかりぐーすか寝ました。







さすがにこのまま朝までいて、先生に見つかるわけにもいきませんからねぇ。







「もー、メチャクチャある」







「しかし、今回は結局何が言いたいんあるか? 殺人事件の現場で昔寝たことがありますっていうのは、単なる武勇伝で自慢話みたいよー」







私が訴えたいメッセージがまだ分からないのですか? だからですねぇ。学校の防犯は大切だということが言いたいんです。







盗人の基礎であるガラス割をしないズブ素人の私でも簡単に侵入できるんですよ。本気で殺人をしようと思ったら、学校はやりたい放題です。







「むぅ、確かにそうねー。危ないね。子供をそんなところに通わせたくないね。ちなみに翡翠はどういう小学校がやりづらいあるか?」







そうですねぇー、私が一番苦戦したのは、大阪の中央区にある某小学校なんですが……







坂の途中に建ててあって学校がお城みたいに石垣の上にできているんです。あれを見たら流石の私も侵入する気をなくしましたね。お城が石垣でできているのが良く分かりましたよ。あれは無理です。もー、全然無理。







だから、もし本気で防犯を考えているんなら学校を石垣の上に作れば良いんです。凄まじい防御力ですよ。鉄壁です。







あと大学みたいに山の中というのも結構効果的ですね。







「ふむふむ」







あと学校に侵入しようとする人間は、大抵下見をしますから、それを潰すことも大切だと思います。







「でも、オッサンが学校の周りをウロウロしてたら妖しいあるよ」







私が下見するときは選挙の時を利用します。学校が一般に開放されますし、大抵の場合、校舎の中をどこでも自由に移動できるんです。







例の石垣の小学校も、選挙の時に一回中をじっくり見て回りました。いや、凄いですね。最近の小学校はシャワー室とかあるんですよ。やっぱり私立の小学校は違うんですねぇ。







やろうと思えば盗撮カメラとかも設置できます。







「犯罪ある……」







だから経済的精神的被害を与えなければ、無罪ですって――







「翡翠、そういう言い方は止めた方が良いよ。いつか警察に通報されるね……」







大丈夫ですよ。私は盗撮はしません。リスクの割にはリターンが少ないですからね。しなくてもインターネットにいくらでも流れてますよー。







「なんか、今日の翡翠は犯罪率高いあるねぇ」







何言ってるんですか。私は超善良な市民ですよー。中学校以上の人間が死んだって、知ったことじゃありませんが、小学生以下の子供が殺されるのは、ちょっと許せないんです!







だから、こうして私がPTAに向かって訴えているんです!







みんなの子供たちの笑顔を守るために! 学校も刑務所並に巨大なフェンスを建てましょう!







外部のものを一切寄せ付けない完全なる城壁を望みます!







「翡翠に『子供たちの笑顔を守るために』とか言われても……。レイプ犯が処女性の大切さを訴えてるみたいよ……」







子供たちをまもろー(`□´)ノ








2月17日







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2005年2月28日






はぁ……







「む、どうしたのだ。翡翠? 随分と神妙な顔をしているが、何かあったのかね?」







いえねぇ、最近志貴様に『翡翠は萌えないよー。萌えキャラじゃないねー』とか暴言吐かれたので、考えているんですよ。『萌え』って、なんなんだろうって。







考えれば考えるほど、わけがわからなくなってきます。







「アリも言っていたではないか。考えるんじゃない感じるんだと







感じろって言われてもねぇ。理論が確立されていない概念って、理解できないんですよ。数式を公式抜きで解くみたいなものです。







というわけで、ネロ教授。今日は萌えについての講義をしてください。







「萌えにつては色々あって難しいんだぞ?」







いいですから。







「ふむ。仕方あるまい。まだまだ萌え考察はバージョン0.6くらいのβ版だが、多少はまとまっているのでしてやろう」







お願いします。教授。







「オホン。では始めるとしよう。さて、萌えの概念的定着は、今から大体十〜十五年くらい前だったと、私は考えている」







まぁ、語源が生まれたのもその頃ですから、そんなものかもしれませんね。語源解説とかもするんですか?







「いや、それは他にしている人が大勢いるからそちらに任せよう。では、翡翠よ。萌えの概念が発生する以前に、萌えはあったと思うか?」







なんだか哲学的なことを聞いてきますね……。卵が産まれる前に鶏がいたかみたいですけど……。まぁ、そうですね。概念的にはなくても、あったんじゃないんですか?







「それは違う。萌えの誕生以前に萌えは存在しない」







もう少し私にもわかるように言ってください。……わけがわかりません。







「それは翡翠が萌えの本質を理解していないからだ。いいかね。『第一の萌え』とは『萌え属性』のことをさしているのだよ」







えーっと、メイドさんとか、妹とか、つるぺたとか、眼鏡とかですか?







「その通り。読者的にツボな外見的特徴や、職業、装飾物、関係、シチュエーションなどを総合して萌え属性という。萌え属性はキャラクター性とは、まったく無関係に存在し、あるだけで萌える要素のことだ」







うーん。そういうものですか?







「一般的にわかりやすく言えば、翡翠はグラビアアイドルは巨乳が好きだろう?」







ええ、好きですよ。







「グラビアアイドル自身のキャラクター性や人間性とはまったく無関係に、とにかく巨乳だと好きだろう?」







要するに一種のフェチズムですか?







「それがもっとも正解に近い。ではフェチズムの正体とはなんだかわかるかね?」







どういうことです?







「今まで一度も眼鏡を見たことがない人間が、いきなり眼鏡フェチになることはないだろう?」







まぁ、そうですね。







あ、でも、一番最初に眼鏡を見たとき、心を奪われて、それ以後眼鏡好きになることはあるんじゃないですか?







「いいところに気が付いた。それこそがフェチズムの根源だ」







はぁ?(←わかってない)







「一番最初に眼鏡をかけていた女の子を好きになる。すると次に眼鏡をかけた女の子を見たとき、その中に一番最初好きだった女の子を投影するという行為が起きる」







前に好きだった女の子と、よく似た子を好きになるってことですね。







「そうだ。そしてそれは三番目、四番目の女の子にも同じことが言えて、積み重ねているうちに、やがて女の子自身は誰でもよくなり、最終的に眼鏡が好きという要素だけが特化されるわけだ」







それが眼鏡っ子萌えーの理論なんですね。







「萌え属性とは、自分が今まで好きだった女の子キャラとの共通点と言い換えてもいい。萌えは積み重ねることによって、次第に大きくなっていく。実際翡翠も昔は妹キャラは駄目だったが、最近は結構好きだろう?」







ええ、割と好きですよ。







「これを萌えが進むという」







……なんか病気が進行するみたいで、ヤナ感じですねぇ。







「仮に、現在の萌え萌えの作品を、二十年前に持っていったとしても、今ほどの評価は絶対に受けない。それは彼らの萌えが進行しておらず、積み重ねがないため萌えを理解できないのだ」







「ピカソなどの芸術家が生前評価されないというのは、あまりにも先鋭的なものは、見るほうの感覚がおいついていかないために発生するのだ。これもよく覚えておくといい」







あ、最初に言ってた萌え発生以前に萌えがない、って理屈がわかりました。







つまり綾波レイ発生以前には、無口キャラ萌えーは存在していなかったということですね。







「その通りだ。飲み込みがいいぞ」







いえいえ。







「ここで重要なのは、『好き』と『萌え』は違うということだ。キャラクターが人間として嫌いでも、萌え属性を持ってると萌えるという現象が起きる」







「ガンダムSEEDにおいて、カガリは人間として好きだけど萌えない。ミーアはあんまり好きじゃないけど、アイドルだから萌える――というようなものか」







「最近は思想的に萌えと好きは混合され始めているから、萌えるキャラは好きだという風潮がある。この辺りは吊り橋効果と同じで、本質的には勘違いなのだがな」







うむぅ、奥が深いですねぇ。







「では次に第二の萌えの話をしよう」







第二とかあるんですねぇ……。







「萌えが確立し始めたのはここ十数年のことで、特に美少女ゲームなどで爆発的に拡がり始めたが、これがなぜだかわかるかね?」







さっぱりわかりません。







「少しは自分で考えないか」







えーっとそうですね。じゃ、ストーリーものから、キャラクターものになってきているからですか? それだけ魅力的なキャラクターが増えたと。







「目の付けどころは悪くない。だがストーリーものにしても、いいキャラクターたちは大勢いる。なのになぜ、そちらは取り上げられない?」







うーん。何でなんです?







「受動的に萌えるのではなく、能動的に萌えているからなのだよ」







いや、意味がわかりませんって。







「ストーリーものでは、キャラクターのイメージをストーリーと設定によって固定しすぎてしまうところにある。本来ならこれはむしろいいことなのだが、萌え文化においては話が少し違ってくる」







「キャラクターに欠けた部分、曖昧な要素があると、その部分を自分たちで勝手に補い出し、オタクたちは妄想を開始するのだ」







「与えられた材料を一旦自分たちの中に取り込んで、自分にとって都合に良い形に変換して、そして自ら萌え始めるのだ」







「同人誌なんかを見ていれば、それが顕著に表れている。あれは彼らが、一旦物語を取り込んで自らもっとも気持のいい形に変換して、再び出力している行為だ。キャラクターではステレオタイプ、お話では学園物がよりウケるのはこのためだな。より変換するハードルが低いため萌えやすいのだ」







つまりオナニーですか?







「キャラクターはオカズだ」







……断言しましたね。







「その妄想を走らせるという進行形の行為もまた萌えーなのだよ。パンチラやギリギリも、妄想を刺激するから、皆に好まれている」







「現実世界ではなく、2D世界に萌えが蔓延するのも、不完全な世界であるため、妄想で補う行為が簡単だからだ」







「またキャラクターはあるけどストーリーはないというようなものも、妄想の働く余地が大きいため萌えやすい。ラグナロクオンラインやOSたんなんてその顕著な例ではないかな」







ははぁ。







「こうなると同人誌において、ヤオイやエロパロが妙に多い理由もわかる」







え? 単に好きなキャラがえっちなことしてるのが好きだからじゃないんですか?







「それでけではない。作品を作る原理原則として、妄想だけでは絶対に面白い作品にはならない。面白いものを作るには高度な技術が必要だ。だがしかし、エロを描くハードルがそれよりもはるかに低い。七色文庫という、官能小説自動生成ソフトがあるが、自動生成できるくらい、エロは単純な代物だ」







「また妄想を最も原型に近い形で表現できる方法こそがエロなのだ! ゆえにエロパロはみんなが書き、売れていく!」







……なんか微妙に話が脱線したような気がしますが、要するに萌えには、読み手の『妄想』が大事だと言うことですね?







「その通りだ」







「まとめれば、萌えとはキャラの属性と読み手の妄想といえるっ!」







「だが、まだこの論は完成ではない。ではどういう『妄想』が萌えなのかというところもまだ煮詰めていないし、他にも萌え原理は存在しているように思う。それに最近はTYPE-MOONのように、ストーリーの前面に押し出してる作品も登場しているため、論の完成にはほど遠い。まだまだ研究が必要だ」







んー。なるほど……。







あの、今ふと思ったんですが……。







「なんだね?」







はぁ、この翡翠の日記帳も一応パロじゃないですか。ということは作者の妄想というのは、こういう形で発散されているんですね……。







「そうというひねくれているのであろうなぁ。他に類を見ぬほどな。ひねくれ作者の書いたひねくれ翡翠だから、お前は萌えキャラにはなれんのだ」







私、今更猫耳とか付ける気もしませんし、まぁ、どうでも良いかーという気がしてきました。







「貴様の悩みはその程度なのか?」







そんなもんです。





2月28日







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2005年3月13日







 教授。またなんかメディア規制の話がでているみたいですよ。







「またそんなもの興味を持ったのか? 翡翠」







ええ、インターネット上ではちょいと話題になっている人権擁護法とかも、可決は延期されたみたいで、なんだか少しばかり興味が出てしまいまして。







雰囲気だけ見てると、ネット規制がしたいんでしょうかね。まぁ、最近ネットに情報伝達のイニシアチブ取られそうなので、テレビとかも沈黙を保ってるんでしょうけど。







「生憎私は、そんな話には興味はない」







へ?







「どうせ、何を語ったところで、最終的には規制反対とかいう結論に行き着くに決まっているのだ。あんな煽られ捲って、過剰反応しすぎてる話なんぞ話題にもなるものか。話の展開にダイナミック性がないではないか!







あー、まぁ、そうですが……。







「なら逆を考えてみよう。いかにすれば、ネット上の罵詈雑言をなくせるか







「私はかつて2ちゃんぶっ潰すにはどしたらいいのかと、かなり真剣に考察したことがある」







……相変わらず物騒なこと考えるんですね。







「実際、みんなネットの権利を守ることに躍起になっているが、ネットの住民から発言の権利をちょっとでも奪おうとするのは、至難の技なのだぞ」







そういうものなんですか?







「ネットはイラクなどの比ではないくらいの無法地帯だからな。どこか戦闘地域で非戦闘地域なのか、私にもわからぬほどだ」







はぁ。







「あの手の掲示板を潰すのは、個人では難しいが、国レベルで力が使えるなら、難しいことではない」







まぁ、そうでしょうねぇ。







「しかしだ。潰したところで、また新しいものが出てくる。個別を潰しても無駄なのだ。そういうシステム(概念)ができ上がってしまっている以上、いくらでも無限に続く。いたちごっことはよく言ったものだ」







ふむ。Winny制作者を起訴して捕まえたけれど、またすぐに新しいP2Pが出てくるとそういう話ですか?







「そうだな。ゴキブリの生命力というのは、ゴキブリ一匹の生命力のことを指しているのではない。ゴキブリという種族全体の生命力のことを指しているのだ。そういう意味で2ちゃんねるを筆頭とする、好きなことを好きなだけ喋れる環境というは、人間の根本に近いせいか、凄まじいまでの生命力を誇っている」







「好き勝手に言い散らかしているだけの輩を黙らせようとしても、すぐに表現の自由を持ち出す。表現の自由というのは、相当強い権利だし、説得力があるから、あんなやっかいな連中はいないぞ。やつらの自己防衛能力は半端ではない。総理大臣ですら簡単にはつぶせんのだ」







ふむ、北の将軍様に核兵器持たせるみたいなもんですね。







「そもそも現時点ですら、インターネット上では著作権違反で溢れかえっている。デジタルデーターがどれだけ不正に流れたことか。それすらも取り締まることが現実的には不可能なのに、匿名性によって発展した罵詈雑言を取り締まることなんて、できるわけがない。絶対無理だっ!」







まぁ、本気で潰そうとしたら独裁政権くらすの権力がないと、無理でしょうねぇ。まぁ、一党独裁っていう前時代的なシステムに日本がなるとは、ちょっと思えませんしね。







けど、やっぱり居心地は悪くなるんじゃないですか?







「言っておくが、規制されても需要さえあれば大抵のものは供給されるものだ」







闇とか裏とか?







「うむ、かくいう私も色々お世話になっている」







関西援交?







「ひ、翡翠……。貴様なぜ、そのことを!」







あ、ビンゴでしたか。幼女ポルノとしては有名じゃないですか。私もチラッとサンプル見たことがありますけど、本当に全裸でランドセルですもんね。







この私ですら引きましたよ……







「馬鹿者! 裸ランドセルを舐めるな! 裸エプロンよりも遙かに萌え度の高い理想ではないか!」







……あれって、裸ランドセルって命名ったんですね。いや、でも、あれは、ちょっとねぇ。さすがに、どうです? 人間として?







「ええい、話がそれてきている」







「法律というのは、正面切って破ってはいかんが、穴なんてものはいくらでもあるものだ」







「十八歳未満が登場してはいけないルールがあっても、エロゲーの登場人物はどう見ても、十八歳未満が九割以上を占めているし、ブルマが廃止されても、未だに体操服と言えばブルマだ」







「表現の自由が多少規制されたところで、それで価値観が変わるわけではない。せいぜい次の世代の価値基準が変わる程度だ。求めるものがいる以上、必ず何らかの形で供給される。その状態が続けば、やがて価値基準が変わるかもしれんが、基準は常に変わるものだ。そんことは私の知った子ではない!」







「少しの間、欲しいものが手に入りにくくなるだけだな」







それが問題じゃないんですか?







「何をいう。妹とやっちゃダメって縛られたことで、逆にインモラル感が増したという見方もある。少年漫画で激しいエロは表現できなくなったが、かえってチラリズム度が増していいと思っている」







「与えられなくなったことで、かえって飢餓状態が生まれ、需要が誕生し、何かの違法な手段で供給される。されなければ、脳内で自己生成が開始され、形を変え合法な形で発散される。こういうものを文化の発展というのではないのかね?」







まとめると教授の主張では、多少の圧力や枷があったほうが、萌えるジャンか――とそういうことが言いたいわけですか?







「うむ、おおよそそんなところだな」







しかしですねぇ。そうやって規制賛成みたいな口聞いてると、ネット業界では敵作りまくりますよ。







「なにをいう。街中を裸で歩いている女の子など欲しくはない。恥ずかしがり屋でがっちり服を着固めているからこそ、欲しいと思うのではないのかね?」







でもさっき裸ランドセルはいいっていってたじゃないですか……







「馬鹿者! ランドセルを着てるではないか! 全然OKだ!」







え、いや……。教授の秩序って、その程度なんですか?







「そんなもんだな」







3月13日







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2005年3月31日






――とあるお昼どきのこと。







「翡翠ちゃんっ! 聞いてください。大変なんですよ!」







また、琥珀姉さんの大変ですか。考えてみればこの日記の書き出しって、この台詞で始まることが多いですよねぇ。







「今度は本当に大変なんですってば。最近秋葉様が、洋曲にはまり始めたんですよー」







べつにいいじゃないですか。私だってエアロスミスくらい聞きますよ。







「さらにコーヒーをブラックで飲むようになったんです」







まぁ、そんなこともあるでしょう。







「村上春樹とか京極夏彦とか読み始めるし、急に汚い大人にはなりたくないとか言うようになるし、妙に凝った下着とか、聞いたこともないようなブランドの服を着始めてるんです」







……







「パソコン新しく買うときも、ランカードは3COMじゃないとダメだとか、モニターはナナオに限るとかなんとか」







……なるほど、そういうことですか。それは大変ですね。







「ええ、どうしましょう?」







わかりました。私からちょっと秋葉様に言っておきますから、安心してください。







まったく、秋葉様にもやれやれですね。







――コンコン







秋葉様入りますよ。







「なに翡翠?」







いえ、少し話が。ってなんですか? さっきからかかってる、この妙に低音を強調した曲は?







「最近、フーファイターズに凝ってるの。やっぱり洋曲っていいわね。これを聞いていたら、邦曲なんか聞く気にもなれないわ」







ときに、秋葉様。街中でよく聞くカラオケソングについてはどう思います?







「最低ね。あんな消費するためだけに作られたものなんて、聞く価値ないわ」







では、最近の漫画については、どう思います?







「漫画なんかもう読まないわね。やっぱり活字ね。最近のはまりどこは、ディクスン・カーかしら?」







ライブドアーVSフジテレビについては?







「古い体勢で凝り固まってる連中に風穴開けられていい気味って思う。さっきからなんなの? 翡翠?」







なるほど。これは確かに重傷みたいですね……。






いいですか。秋葉様落ち着いて聞いてください。







あなたは現在中二病という病に冒されています。







「は……、なにそれ?」







最近、インターネットで認知されるようになった病気のことです。







簡単に言いますと、中学2年生程度の屁理屈で社会を否定し、自分の独自の考えに酔うような症状のことを指します。






妙にマイナーなジャンルに興味を持ち始めるのが、その兆候だと言われています。他にも煙草を吸わないのにジッポだけは持っていたり、因数分解が何の役に立つんだよとか言い出したり、プロに対して妙に評価が辛かったりするそうです。





中学二年生でこの病気になれば、可愛いものですが、これを過ぎてからかかると非常に恥ずかしいというか、イタイ病気のことです。







頭が悪い癖に、背伸びしてよく見せようとしているというか、まぁ、大阪弁でいうところの「うれし」なんですね。別名アホと言います。







「なによそれ。どんなものが好きでも、私の個性でしょう?」







「それよりマスコミに作られた価値観に乗せられてるほうが、よっぽど何も考えてない馬鹿じゃないの」







は、『マスコミに作られた価値観』ですか。まさに症状を発症してますね。






秋葉様。そうやって個性を持つことが格好いいとか思ってるんですか? あー、いやですねぇ。本気で嫌です







アメリカ仕込みの個人主義が入ってからというもの、こういう人が増えてきてる気がしますよ。







自分は他の人とは違う。だから自分は素晴らしい。そんな個性的な自分が大好き。とか思ってるんでしょう?







まことに申し上げにくいんですが、これはごくごく一般的な普通の意見として聞いてください。







「なによ?」







そういうのキモいですよ( ̄m ̄*)







「……あ、あんたね」







実際問題。個性的というのは、キモイものです。絶対キモいです。それはもう激烈に。







普通ではないんですから。変なんですから。格好いいと思われる以上に、気持ち悪いと思う人がいて当然じゃないですか。







自分が個性的であると自認している人は、自分が他人から見たとき、キモイことがあることになぜ気づかないんでしょうね。







自分は世の中を斜めに見て、世の中にあるものを否定しているくせに、いざ自分がキモーって言われたとき怒るんですから。わけわかりませんね。







「じゃ、あんたはノセられてる無個性集団は馬鹿じゃないっていうの?」







いいえ、あれはあれでどうかと思います。しかし、個性的であることは、それを遙かに上回って重傷だと思っています。







「……」







オタクな人達を見習ってほしいものです。彼らは世の中を斜めに見て、妙なものを偏愛しすぎて社会不適格者一歩手前ですが、自分たちがキモイことを理解しているぶんだけ、まだましです。







まぁ、最近は自分のことをキモイと思わなくなった、オタクさんが増えてきて困ったものですがね。







「……」







ここまで来ると、個性的であることは、むしろ忌むべきことなんだと私は思います。







「そこまで個性を否定するの……あんたは?」







ええ。自分のことを個性的な人間って思っている人は、自分で自分のことを馬鹿だと言っているようなものです。








インターネットとかで何か書いてる人は、特にこの辺りには注意してほしいですね。







実際、みんなの意見に追従して満足している馬鹿と、独自意見を出して喜んでる馬鹿の二種類しかいないと思ってます。







まぁ、馬鹿にされたくなかったら、何も言わないのが一番です。







「ちょっと待ちなさいよ。そんなこと言ったら、あんたもそうでしょう。いっつも個性的なこと言って、自分は人より偉いんだー。なんでも知ってるそー。みたいな口聞いてるじゃない」







私は芸人ですから。







「はぁ?」







人を楽しませてなんぼ、馬鹿にされてなんぼの商売ですからね。馬鹿と言われようが、キモイと言われようが、芸人やっている以上、やらないわけにはいきましょうんでしょう?







っていうか、馬鹿やアホは芸人に対する誉め言葉という見方もありますしね。







「……」







わかりましたか。秋葉様。今、あながたがやってることは、全部、一つ残らず、キモイ行動です。キモイと言われるのが嫌なら止めましょう。キモイと言われることが快感なら、ただマゾです。プライドがないなら人間失格です。







さぁ。どうします?







「……私にどうしろと?」







とりあえず、ブランド物の服を着てチャラチャラして、髪の毛染めて「ちょーきもちー」とか「やばいよねー」とか「想定内です」とかかったるそーに言いながら、夜中の二時までミュージックステイションで歌われるような曲を、アホみたいな顔でカラオケで歌ってください。







「ねぇ、翡翠」







なんでしょう?







「なんだかんだ言いながら、あんた流されてる人間も馬鹿にしてるでしょう?」








そんなことはありませんよ(にっこり)







「あんたはあんたで、絶対病気だと思う……」







想定の範囲内です。






「……」






3月31日







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2005年4月16日






 はぁ……。春ですねぇ……。







「どうかしたのか? 翡翠。なんだか憂鬱そうな顔をしているが。春の新番組をチェックしていたのではないのか?」







 いえね教授。テレビ欄を見ていると、ゴールデンタイムに野球の二文字がちらついて鬱陶しいったらありゃしません。



(*今回のは野球ファンの人は読まないほうがいいかもね)





「翡翠は野球が嫌いなのか?」







 嫌いです。私のお父様が好きで、シーズンになるとテレビに齧り付いているせいですかねぇ。チャンネルを変えさせてくれませんし、しょっちゅう時間延長しますし、『下手くそ!』とか『あんなんも捕られへんのか』とか、テレビの前で野次飛ばしますから、必然的に嫌いになりました。







 やっぱりね。『野球選手は凄い』っていうふうに刷り込まれれば、多少は違ったのでしょうが、『野球選手はへぼい』というふうに教えられましたから、あれで好きになるほうがどうかしてます。







 ねぇ教授。プロ野球なくなりませんかね? あること自体は否定し、好きな人も否定しませんが、テレビに出すぎて鬱陶しいです。せめてテレビの延長放送だけでもなくなれば、その後の録画に影響しないんで、随分違うんでしょうが。







「ふむ、最近の若者なら誰もが思うことでもあるな」







 けど最近は野球人気が右肩下がりで、衰退ムードむんむんらしいじゃないですか。これを機になくしてしまいたいですね。







「ちなみに私はプロ野球もそろそろ、野球中継がなくなっていくのではないかと見ているぞ」







 お! そうなんですか?







「翡翠はプロ野球の歴史というものをどのくらい知っている?」







 まったく知りません。興味ないですから。







「わかった。では、簡潔に説明してやろう」







「日本にはプロ野球ができたのは今から数十年前、高校野球を朝日新聞が主催して人気が出て、それならばってことで、大学野球を毎日新聞が主催することにした。みんなやってるしってことで、読売新聞が社会人野球を主催することになったわけだ」







「最初は大して人気がなかったが、六大学野球で人気を博していた長嶋茂雄――いわゆる一つのミスター長嶋だな――が大学野球のメンバー引き連れて、プロ野球に乗り込んできたことによって、爆発的に人気が出た」







 はー、それで長嶋監督ってあんなに、みんなからわーわー言われてるんですね。







「まさに彼がプロ野球の時代を作ったのだな」







「さて、そんな大人気男の長嶋を利用したのが、読売巨人のオーナー







「当時、テレビというものが普及し始めたばかりだったので、読売新聞の広告塔にしてしまったのだ」







 なるほど。







「メディアを通じて巨人を宣伝する。巨人が人気が出れば読売も人気が出、読売の人気が出れば巨人の人気もでる。メディアの成長と球団の成長がリンクしていた。今風に言うとシナジー効果によって、どんどん大きくなっていったわけだ」







「やがて野球が非常にテレビ映えする球技であることも手伝って、プロ野球は国技的スポーツの位置を獲得したわけだ」







 はー、なるほど、要するにメディアのおかげで野球という世界的にはマイナーなスポーツが、日本で十数年にもわたって、大人気になってしまったわけですね……。







「時代劇と同じでマンネリズムを獲得したものは、最高の商品だからな」







 マンネリズムの獲得ですか?







「要するに、お茶、紅茶、コーヒー、コーラーみたいな、飲み慣れたものを飽きもせずに飲みたいと感じる人間心理のことだ」







 何の工夫も必要とせず、同じ物を生産していれば、顧客が満足するということですか。







「ところが! ここ最近になって二十パーセント近くを誇っていた巨人戦の視聴率がどんどん下がり始めた」







「この前聞いた話だと、九パーセント台にまで落ちたらしい。ゴールデンタイムの視聴率の平均が十三パーセントほどだから、これは大問題だ」







「巨人への戦力集中、スター選手の大リーグへの放出による魅力の低下、娯楽の多様化、そしてプロ野球のカリスマ長嶋茂雄の引退。たかが一監督の引退に号外が出るのもこのためだ。プロ野球の人気を最初に作り出した人が辞めるというのは、まさにプロ野球界の落日だったわけだ」







 ここまでくると、プロ野球人気が低下するのもうなずけますね。







「というか、ここまで閉鎖的なシステムで、これほど人気があったほうが異常だったのだ」







 メディアによる洗脳だったんじゃないですか?







「たぶんそれが正しいだろう」







「はっきり言って今のプロ野球界は、昔の財産だけでやりくりしている状況だ。実際、プロ野球を見る年齢層は五十歳以上が七十パーセント、三五歳以上となると八五パーセントを超えている」







 そんなに片寄ってたんですか?







「翡翠の友達に、プロ野球を応援に行くようなヤツがいるか?」







いませんね。







 プロ野球のイメージが、そもそも『親父臭い』ですからね。若い人にはサッカーとかのほうが受ける気がします。







「圧倒的なプロ野球人気とメディアの力に頼りすぎたツケだな。自分たちの権威や利権にこだわって、アマや外国と垣根を作ったり、ファンを獲得しようという地道な作業をおこたったのが、最大の失敗だった」







「特にパリーグは瀕死になるところまで来てしまった」







 それで去年、一リーグ制とか言ってたんですか?







「実際、私が巨人や他のオーナーだとしても同じ道を取るだろう。プロ野球を日本ナンバーワンのスポーツであるためには、全国ネットで放送しつづけ洗脳し続ける必要がある。そのためには十チーム一リーグ制のほうが、全体の底上げには効果的だ」







「日本の球団は企業の広告塔としての役割が圧倒的に高いため、全国展開こそがもっとも望ましい姿なのだ」







 でも、それじゃー、結局野球はどんどんつまらなくなっていくのでは?







「かもしれん。だが、野球という小さくなってしまった市場で健全化するためには致し方ないのだろうな」







「私が思うにナベツネの考えというのは、こういうとこにあるんだと思う」







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教授が考えるナベツネの考え







 共存共栄だと! こんな状況でそんなことができるかー!







 お金を持っているところが強いチームを作るのは当間だろう? 大リーグのニューヨーク・ヤンキーズにしても、スペインリーグのレアルマドリードとかバルセロナにしても、豊富な資金力を用いて、強いチームを作って成功している。常勝チームが人気が出るのは当然のことだ!







 球界の最大の問題は、セリーグ、パリーグの収益の致命的な格差だ! だが、メジャーリーグの収益分配システムは日本では無理だ。金を儲けている企業が、儲けていないチームに金を渡すなどと、できるわけがない。読売が企業である以上、自社利益に反することはできん。そんなことはどの会社においても当たり前だ!







 そもそもすべてが均等になるように分配するという社会主義システムは、業績全体が右肩上がりのときにのみ可能な方法だ。高度成長期、田中角栄が地方に金を分配できたのも、このためだ。







 逆に右肩下がりのときは、強者と弱者が二分化する資本主義システムに移行するのが健全な経営というものだ。事実、今の日本政府も同じことをしている。







 それを逆行して行えば、結果として北朝鮮のように衰退するのは目に見えているではないか!







 放送収入をある程度均等化するために、一リーグにするという発案は、読売が損をせず、なおかつ全体の健全化ができる唯一無二の方策であることは考えるまでもない。だがそれでは他のセリーグの球団の収益が減ることになる。ならばそれを最低限に留めるべく、チーム数を減らして、十チーム、いや、八チームによるによる一リーグ制がもっとも現実的な形!







 我々は野茂のアホがメジャーに行ったお陰で、変な流行ができてしまい、メジャーリーグと競争しなければならん!







 経営的により高みを目指し、選手を満足させられる年俸を払う。それが選手の獲得に繋がり、結果として国内リーグを発展させることに繋がることが、なぜわからん!







 プロ野球選手が日本球界のことを考えているだと? そんなわけがあるか! あの連中は、ストなど起こして経営陣を苦しめたくせに、年俸の契約交渉ではいつもごねる。もっと金を、もっと金をだ。







 身の丈にあった経営をすればいい。共存共栄などと唱えたところで、選手は金の高いところに行くだろう。現に巨人にみんな集まったのがいい例だ。ならいくらでもメジャーリーグは金を積み、スター選手は海外に流れる。







 日本球界を愛しているなら、メジャーなんかには行けないはずだ。奴等は自分のことしか考えていない!







 結果として日本球界はメジャーリーグ養成所になり果ててしまう。







 それで日本野球の発展はあるか? 否だ! 断じて否だ! 我々はメジャーリーグの下部組織ではない。メジャーに対抗できるだけだの組織を目指さねばならぬのだ。







 オリンピックにプロの選手を出したら、プロ野球の視聴率が三パーセントまで落ちてしまったではないか! メジャーリーグに選手を奪われたプロ野球の末路がこうだ!







 なら少数精鋭しかあり得ない。資本主義の競争原理を働かせ、メジャーリーグに対抗できる組織にならねばならぬ。







 ファンの声など知ったことか。大体、なぜやつらは二リーグ制にすることにそこまでこだわる?







 日本シリーズやオールスター戦がなくなっても、それに変わる別のコンテンツを作ればいいではないか!







 日本シリーズやオールスター戦は、『伝統』だからなくしてほしくないだと? 古い体質を変えられないのは、私たちではなく、お前たちのほうではないか。ふざけるな!







 外国人枠を広げてグローバルにすればいいと思っても、お前達は、日本人が出てこなくなったらつまらんとか言うではないか!







 貴様らの要望を完全に加味したうえで、さらに発展していけとほざく、経営のなんたるかも理解していない有象無象の衆を見ていると、吐き気を覚える。







 あれだけ苦しい財政をしていたパリーグの経営陣が、努力していなかったとでもいうつもりか? あそこまで行き詰まったのも、今を維持したまま健全化しようとしたからではないか。







 お前らが考えてやろうとしたことくらい、とっくにやろうとしたわ。だが明らかに無理なのだ。不可能だ。







今の体勢(二リーグ、十二球団)を維持しようなどと古い考えに固執する輩がいるから、日本球界は衰退してしまうのだ!







===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ====




……



 ナベツネって本当にこんなこと考えてるんですか?







「おおよそは、こんな感じだと思うぞ?」







 うーん。メジャーリーグに対抗しなければならない、右肩下がりの今、資本主義の原理なくして発展なし、ってところはわかるんですけどねぇ……、所々もの凄い論点のすり替えが……。







「そうだな。実際球団が増えたら、放送収入が減ってしまうからな。だから球団が増える方向にはならん。そんなことになれば一球団の収益が減り、ますますメジャーに勝てない。それもこれも入場者収入ではなく、放送収入に頼ってきたがゆえなのだがな」







 はー、なるほど。政治もプロ野球も似たようなものですね。







「翡翠はどうも、巨人=悪い組織の典型みたいなイメージが強いようだが、メジャーリーグのオーナーたちの理想は、巨人軍なのだぞ?」







それは意外ですね。







「そもそもメジャーリーグは『シアトル・マリナーズ』や『ニューヨーク・ヤンキーズ』というチーム名が示すとおり、一企業の広告塔ではなく、都市対抗野球的な要素を持っている。これはJリーグも同様だな。『横浜Fマリノス』『ガンバ大阪』など。だから普通は特定の地域にしかファンがいないわけだ。巨人のように圧倒的な全国展開はできんのだ」







「またメジャーリーグは放映権収入などの資金を均等に割り振らなくてはならないシステムだから、ヤンキーズとかはかなり損をしている。巨人のように圧倒的に利権を持つことは、アメリカの経営者にしても魅力的なものなのだ」







 じゃー、なんでそうならないんですか?







「メジャーにおいてそうならないのは、一番人気は毎試合視聴率四十パーセントアメフトで二番がNBAで、三番がやっとメジャーリーグという人気の低さにある。平均視聴率だって、十パーセント程度だ」







 あれ……以外と低いんですね。







「ゆえに、メディアによる戦略ではなく、単純に入場者数を増やそうという戦略だ。だからそのぶん、球場に人を入れる活動や、育てようとする活動は活発だ」







 テレビ放送してさえいればいいと考えている日本プロ野球界とは、その辺りの意識がまったく違うわけですね……。







「まぁ、メジャーのシステムがなんでもいいとは思わないがな。FAシステムのせいでメジャーも年俸が急騰してしまった。あれは相当問題だ。アメリカがあれを辞めない限り、日本でも辞めることはできんな」







「ファンにしても慢心してる。野球は不滅だと思い込んでいるふしがある。特に巨人ファンと阪神ファン。前に一度、サッカー文化が日本に定着したかと思うかと某所で聞いたことがある。翡翠はどう思う?」








 定着したんじゃないですか? 今の小学生とかにしても、将来は野球選手になりたいっていう子より、サッカー選手になりたいって子のほうが二倍いるって話を聞きましたし。







「私もそう思う。ところが、そいつはこう言った。『サッカーなんて、Jリーグ始まった最初だけで、あとは代表戦だけじゃないか』と」







 あー、でもそう思っている人多いんじゃないですか?







「とんだ間違いだ。私も野球とサッカーなら、まだまだ野球に軍配が上がると思っている。一時期のファッション的なブームが過ぎ去ったあと、人気が低迷したのは事実だ。人気が落ちたと言っても日本人は野球が大好きだ。


だが、さきほども書いたがJリーグは都市密着型。その地域に定着し、その土地の人達と共にあるというスタンスを取っている。自分たちが野球より劣っているという自覚もあったから、草の根の活動はかなり活発に行っていた」








「サッカーはもともと非常にローカルな組織なのだ。その試合を全国ネットで放送して視聴率が取れるわけない。当たり前のことだ。メジャーリーグだってローカル放送がメインで、全国放送ではまったく数字が取れないのと同様だ」







「全国ネットでの放送収入を当てにしていないから、今では開幕戦の入場者数が野球を上回るまでになっている」







 目立たないだけで、色んな地方に潜在的なサッカーファンは多いわけですね。







「実際日本代表戦は、平均視聴率四十パーセントを超える。瞬間最大視聴率なら五十パーセント以上。今やオリンピック並に巨大なコンテンツと言えるだろうな」







 野球の日本シリーズはどうなんです?







「昨年の視聴率は僅か十七パーセント程度しかない」







 野球も落日ムードですねぇ。







 あーでも、去年の球界再編問題で、少し健全になっちゃったんじゃないんですか?







 新球団とかもできましたし、交流戦が行われるようになりましたし、四国の独立リーグなんてのもありますしね。野球のワールドカップ構想とかあるらしいですし。







 野球にたいして興味のないこの私でも、イチローとか松井とかの代表チームが戦うのは、面白そうだなぁとか思いますからね。







 雨降って地が固まってしまったら、アンチ野球ファンの私としては、悲しい限りですよ。







「国際舞台には確かに目を向けている。あまり知られていないが、野球のアジアカップは今年からやるみたいだがな」







 え! いつのまにそんな構想が!







「うむ、日本シリーズ終了後、韓国、中国、台湾のリーグ優勝者とアジアナンバーワンチームをかけて試合するらしい」







 も、盛り上がりそうですか? サッカーみたく……。







「これは微妙なところだろうな」







「サッカーのワールドカップがあれほど盛り上がるのは、世界中にサッカーが存在し、なおかつ、多くの国々の力が拮抗しているからだ。さらに欧州と南米が二強として存在しているのもバランスがいい」







「日本のレベルは世界から見たらまだまだ低い。にもかかわらず、サッカーワールドカップの最終予選があれほど数字が取れるのも、アジアの上位四チームくらいのレベルが、それほど変わらないせいでもある」







「またナショナリズムの影響で、『この国には絶対負けたくない』という現象も起きる。二月の北朝鮮戦なんかは顕著な例だな。代理戦争としての意味合いも強い」







「そしてW杯本戦は『夢の舞台』だからな。どこの国も必死だし、ほとんど一発勝負だから一戦一戦の重みが違う。それこそ命がけで勝ちに来る。モチベーションの高さがビンビン伝わってくる」







「『自国スター軍団の代表チーム』『立ちふさがる強力な敵チーム』『国をあげての応援』『緊張感のある試合』『未開拓の夢の舞台』、これだけの材料が揃えば、面白くもなる」







野球のほうはどうなんですか?







「うむ、知っての通り野球は非常にマイナーなスポーツだからな。先進国で野球が人気あるのは、アメリカと日本くらいだ。オリンピックでも正式競技から外そうなんて意見も出るくらいマイナーだ」







「そんなわけで、野球のアジアカップなんてあったって、日本が勝つに決まってる。せいぜい相手になるのは韓国くらいだろうな」







「ぶっちゃけたところ、日本シリーズの優勝チームと、四国独立リーグの優勝チームが、真の日本一決定戦なんてやって盛り上がると思うか?」







 ……。それは、あまり面白くなさそうですね。







「うむ、日本オールスターVSメジャーリーグオールスター戦くらいの面白みしかないだろう。エキビジョン・マッチだな。モチベーションは相当低いだろう。だからアジアカップは脅威になるほどは盛り上がらん」







 じゃ、野球のワールドカップのほうはどうなんですか? メジャーリーグが参戦してきたら、危なくないですか?







「メジャーリーグの参戦は、実際は厳しいだろう」







「先程も書いたが自分が最強だと知っているのに、他の弱小チームと戦っても、モチベーションがあがらないからな。なにより各国のスケジュールの調整が不可能なくらい難しい」







「ただ日本と違